2024.07.12 【電子部品技術総合特集】研究開発の取り組み 京セラ 仲川彰一執行役員研究開発本部長

仲川 執行役員

情報通信など4重点分野

連携し新事業の創出に力

 京セラは、社会課題解決の4重点分野と位置付ける「情報通信」「モビリティ」「環境・エネルギー」「医療・ヘルスケア」の研究開発を強化している。M&Aやオープンイノベーションを積極的に推進し、新事業創造に力を入れる。

 仲川彰一執行役員研究開発本部長は「4分野は完全に分かれているのでなく、関連があってつながっている。それを技術として組み合わせ、新たな価値がつくれることが特徴」と話す。

 同社は2024年3月期からの3カ年の中期経営計画で最大3500億円の研究開発費を設定。ソリューションビジネスの拡張と新事業の創出に不可欠な開発投資を継続的に実施している。特に重点4分野の研究開発は「集中する領域は絞って投資している」(仲川本部長)という。

 情報通信は次世代通信、データーセンター関連の光領域。環境・エネルギーは電池とエネルギーマネジメントシステム。モビリティーであればADAS、自動運転技術、路車協調システム関連。ヘルスケアは医療材料技術、医療関連ソリューション。特に6G、5Gの次世代通信関連、高効率GaNレーザーは投資を加速し事業化に向けて展開している。「総じて計画通りに推移している」(仲川本部長)という。

 同社は研究開発拠点を全国に3カ所展開している。みなとみらいリサーチセンター(横浜市西区)では最近、次世代通信の研究にシフト。組織を見直し、人員体制も強化した。材料開発を推進するきりしまR&Dセンター(鹿児島県霧島市)は22年に開設。デバイス開発を推進するけいはんなリサーチセンター(京都府精華町)も研究開発を進める。海外でも関連会社が研究開発を進め連携を強化している。

 各施設では、オープンイノベーションや大学、企業、スタートアップとの連携を推進。京都では企業・大学による共創・人材育成の場「京都クオリアフォーラム」に参加。さまざまな企業のトップや大学の研究者が集まり、ネットワークを生かしながら社会課題の解決を目指し議論している。

 今期は研究開発費として過去最大規模の1200億円を用意。開発、実証を進め、事業化に向けて取り組む。来年には野洲開発センター(滋賀県野洲市)が開所予定。分野ごとに技術者を各拠点に集約するとともに、拠点間の連携を強化する方針だ。

 生成AIの活用も積極的に推進。研究開発の初動立ち上げのスピード力を高める。