2024.07.30 【家電流通総合特集】「くらしまるごと」戦略 構想実現の素地整う ヤマダホールディングス 山田昇代表取締役会長兼社長CEO

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ライフセレクトでは家電から家具・インテリア、リフォーム、住宅まで全てがそろうライフセレクトでは家電から家具・インテリア、リフォーム、住宅まで全てがそろう

ライフセレクトでは家電から家具・インテリア、リフォーム、住宅まで全てがそろうライフセレクトでは家電から家具・インテリア、リフォーム、住宅まで全てがそろう

ライフセレクトの出店拡大

改革を成果につなげる

 家電やリフォームを中心としたデンキ、新築などの住建、住宅ローンなどの金融、リユースなどの環境の各セグメントの事業を有機的に連携させることで私たちの生活全体をより良くする「くらしまるごと」戦略を掲げている。

 少子高齢化が進む中、家電販売だけではなく暮らし全体を支援することにいち早く取り組み始め、約10年にわたって改革を続けてきた。ようやく描いていた構想を実現できる素地が整ってきたとみている。

 くらしまるごとを実現するために、2017年から家電とインテリア・リフォーム、住宅の三位一体の新業態店「家電住まいる館」を展開し、21年からは新コンセプトの「LIFE SELECT(ライフセレクト)」の出店を始めた。

 ライフセレクト店は、家電から家具・インテリア、リフォーム、住宅、おもちゃに至るまで生活に関わることが全てかなえられる、当社の知見が全て入った店舗で、売り場面積も4000坪(1万3200平方メートル)クラスになる。

 これまで新規や既存店の改装や拡張により出店を続け、3000~4000坪超クラスを9店舗、3000坪クラスを24店舗出店している。23年4月には創業の地に「テック・ライフセレクト前橋吉岡店」をオープン。今年は併設した住宅展示場も開設した。これこそが、くらしまるごとを実現する店舗の姿だと考えており、この先も出店を拡大したいと考えている。

 ただ、ライフセレクトは大規模な敷地の確保が必要になるため、当初の想定よりも店舗開発は遅れているのが実情だ。少しずつ新規出店できる見通しも立ちつつあるため、来年度以降はライフセレクトの店舗開発も進んでいくとみている。ライフセレクトが拡大していけば、全体の業績に大きく貢献していくと考えている。

リフォームも拡大

 いち早く取り組んできたリフォームも順調に拡大している。リフォームをどこに頼んでよいか分からない人が多い中で、今は「リフォームといえばヤマダ」と感じてもらえるようになってきた。家電とリフォームをワンストップで提案できることも強みで、当社の信頼や安心感も評価につながっている。

デジタル・テレビなどメディアミックスで販促

 インターネットの普及とともに消費者の生活スタイルも大きく変わってきた。ネットはデジタル社会の入り口になっている。店舗は実際に見て触れる体験型の売り場が重要になり、一方でデジタル技術を活用した販促や来店促進なども必要になってきている。当社は消費者の特性に合わせて、あらゆるチャンネルを活用して販促を進めている。

 これまで主流だった折り込みチラシによる販促は、最近の動きをみると地域や年代によって合わなくなってきている。現在、会員ビッグデータを活用し、地域や特性に合わせてデジタル媒体による販促も進めている。さらにメディアミックスの考え方からテレビショッピングにも取り組む。

 テレビショッピングは、家具・インテリア、リフォームといった他社にない商品も提案している。折り込みチラシやネットでは伝えられないリフォームなどを積極的に提案することで、来店促進にもつなげている。住宅関連もテレビショッピングと親和性が高いとみており、今後検討していく。さまざまな媒体を活用して商品の訴求ができるのも当社ならではだと感じている。

 自社オリジナルブランド商品(SPA商品)の開発も進めていく。また、今年度は創業50周年モデルを続々と投入する予定にしており、120アイテムを発売する。SPAは当社にとっても重点施策の一つとして捉えており強化していく。

インドネシア注目

 他社とは違う特長として海外事業がある。現在、東南アジアを中心に30店舗で展開しているが、サプライチェーンをはじめ全てを見直し、効果的な店舗網を展開できるよう整備を続けている。特にインドネシアに注目している。インドネシアはこれから大きく成長する市場で、流通などはかつての日本と同じような形になっている。

 当社がかつて日本で地域家電店から家電流通のサプライチェーンを構築してきたノウハウをインドネシアでも生かせると感じている。現在、インドネシアでのサプライチェーンの整備を進めており、1~2年で環境は整ってくるとみている。海外事業は5年で1000億円を目標にしており、実現に向けて着実に施策を打っていく考えだ。

 住建セグメントは、先行投資が必要な事業領域だが、ヤマダホームズやヒノキヤグループ、ハウステックといった各事業会社の体制が整ってきている。スマートハウスの開発や販売を進めるとともに、デンキセグメントとの連携を図り事業間シナジー(相乗効果)が出せる。住宅事業は土地の確保なども重要になってくるため、不動産ネットワークを再構築しながら進めていきたい。

 環境セグメントでは、リユース事業を強化し工場の新設をするほか、廃棄物焼却発電施設も新設する予定にしている。ようやく各事業の地盤ができたので、シナジーが出てくると、全体が大きく成長に向けて動き出すとみている。

 当社は、24年度は売上高1兆6650億円、営業利益482億円、経常利益532億円、最終利益282億円の増収増益を目指している。国内家電市場は、早い時期からの猛暑などもあり足元の状況は悪くない。まずは、これまで進めてきた改革を確実に成果につなげ、収益を拡大していくことが重要だと思っている。