2024.08.01 マクセル、新中計達成への戦略 中村啓次社長に聞く

マクセルの中村社長

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全固体電池は今中計でさらなる進化を全固体電池は今中計でさらなる進化を

アナログコア技術が軸

成長投資は350億円に増加

 マクセルは2026年度に売り上げ1500億円、営業利益率8.0%、ROE(自己資本利益率)10.0%を目指す新中期経営計画「MEX26」をスタートした。19年度の赤字を受けて構造改革に取り組み、前中計では選択と集中を徹底し経営基盤を立て直してきた。新中計は成長投資を加速する計画で、初年度の24年度は、成長の一歩を踏み出すための重要な年になる。中村啓次社長に戦略を聞いた。

—前中計で構造改革は進みましたが数値は未達でした。どのように分析していますか。

 中村社長 各事業領域で濃淡はあるが、新型コロナウイルスの影響は大きかった。BtoB(法人向け)事業では、顧客の課題を直接面談し吸い上げながら製品開発していく取り組みが十分にできず遅れが出たほか、BtoC(一般消費者向け)事業では除菌消臭分野に注力しようとしたが技術面で実現が難しかった部分があったことなど、見通しとの差異が生まれたことは反省点としてある。

 一方で、電池とテープ製造で培ってきた独自の量産技術「アナログコア技術」の棚卸しを行い事業拡大に向けた種まきができたほか、プロジェクター事業の縮小や国内BtoC販売事業を電響社に移管でき収益性を大きく高めることができた。

 新事業として開発を進めてきた全固体電池の量産化に向けた開発も実現できるなど、成果はあったとみている。

—新中計はどのような骨子で進めますか。

 中村社長 アナログコア技術を軸に既存事業にメリハリをつけていくとともに、モビリティー、ICT(情報通信技術)/AI(人工知能)、人/社会インフラの注力3分野に集中投資して収益拡大を目指していく。特に前中計で173億円だった成長投資は2倍以上の約350億円に増やす計画だ。

 前中計では営業利益率10%を目指したが残念ながら実現できなかった。当社は30年に向けたビジョンを掲げている。30年度に営業利益率10.0%、ROE12.0%を計画する中、新中計は改めて仕切り直す。既存事業にメリハリをつけるとともに成長事業への仕込みを進める。事業基盤整備も加速させる。

—新事業では全固体電池が立ち上がり始めました。

 中村社長 前中計でセラミックパッケージ型の製品化と量産ラインの立ち上げを行った。今中計で第2フェーズに入り、寿命や耐熱性、容量を進化させながら用途を広げていく。26年度に10億円規模まで拡大し、30年度には想定市場規模の10%に当たる300億円を目指したい。

 全固体電池以外でも発泡成形部材や電波吸収部材などは事業化に近い技術として提案を始めているほか、新事業創出に向けた開発にも取り組んでいる。新事業統括本部が中心になり進めていく。

—依然として市場環境は不透明ですが、現状と見通しはいかがですか。

さらに新規顧客開拓

 中村社長 為替や材料費の高騰などもさることながら、業界に応じたさまざまな要因もあり各事業領域で濃淡はある。ただ、全体ではおおむね計画通りに推移している。前中計では、今中計中に収益につながる顧客開拓が着実に進んだ。掲げた成長投資の計画は、前中計での顧客開拓がある程度進んできたことを織り込んでいる。

 開拓した顧客と関係を密にして製品を納入していくことがこの先の成長を左右するとみている。もちろん今中計でさらに新規顧客を広げていく必要があるため新規開拓を加速させる。次の成長に向け投資をやり切りたいと考えている。