2024.08.30 【ソリューションプロバイダー特集】各社の事業戦略 三菱電機ITソリューションズ 楓淳一社長

業務と事業DX化推進

サービス提供の方法も刷新

 2023年度の業績は好調に推移し、計画通りの実績を上げることができた。

 24年度のICT市場は、一部不透明感はあるものの23年度に続き企業や組織によるデジタル技術の活用がさらに加速し、クラウドサービスやAI活用による自動化や省力化への投資も増加傾向にある。24年度後半も物価高やコスト増、人手不足など、さまざまな課題はあるが、積極的なICT活用の流れは変わらず、市場のさらなる成長が期待できる。

 当社は昨年創業50周年を迎えることができたが、新たなステージへの変革が必要と考え、業務のDX化と事業のDX化を推進している。

 業務DXとして、4月に社内基幹システムをERP化し本格稼働を開始した。これまでシステムごとに分散していた社内データを一元化。受注時から納入までのコストが容易に把握できるようになったほか、お客さまに関わるデータを一括して把握するベースを作ることができた。周辺システムを含めた本格活用はこれからの部分も多いが、大きな一歩と考える。

 事業DXでは、当社が保有するパッケージソフトウエアのクラウド化を推進。既に実現している薬局や酒販店向けのシステムなどに加え、新たに業務系や業種系のシステムのクラウド化のプロジェクトを複数推進している。当社の製品だけでなく、関連する他社のサービスをAPI連携して利便性を高め、既にお付き合いいただいている1万5000のお客さまに加えて、さらに広い範囲のお客さまに、容易にリーズナブルな価格で当社のシステムを利用いただくことを目指している。

 クラウド化に伴いサービス提供の方法の刷新も必要と考えている。手軽に利用できるサービスとともに手厚いサービスも準備して満足度の高いサービス提供を実現したい。また、AIの活用も進めている。社内に設立した専門のプロジェクトチームを中心に社内での生成AIの活用を具体化し、社員全体を底上げする活動も実施している。事業にAIを組み込むべく製品特許を取得したり、ベンチャーとの共同開発なども進めている。

 当社のクラウド薬歴サービスに生成AI技術を活用した服薬指導&薬歴作成支援システムを開発・搭載するため、東大発のベンチャーmediLabと提携して共同開発に取り組んでいる。9月の第57回日本薬剤師会学術大会の当社ブースで、共同開発の成果物を参考出展する予定だ。

 業務や事業のDX化をさらに進め、三菱電機グループが推し進める「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革やデジタル基盤「Serendie」とも連携して、ITで社会に貢献できる企業としての取り組みを一層強化したい。