2024.08.30 【ソリューションプロバイダー特集】各社の事業戦略 東芝デジタルソリューションズ・月野浩取締役常務ICTソリューション事業部バイスプレジデント(東芝常務執行役員)
量子関連の取り組み強化
AI、ブロックチェーン、気象 新たな施策を実行
2023年度は当社の事業領域でもある官公庁や製造業、社会インフラなどで堅調に事業を進められ計画通りに伸ばすことができた。24年度も社会インフラや官公庁を中心に順調に滑り出せている。この1年ではAI、ブロックチェーン、気象データの領域で新たな施策が打てた。
生成AI(人工知能)は当社の業務で活用を試みマイクロソフト365コパイロットを全社員が使用。最適な質問や指示ができるようプロンプトサイトを作り、私たち自身のAIスキルに結び付けようとしている。既に人材管理のeラーニングに生成AIを組み込み、成熟度テストの問題を自動生成している。社内活用の成果は外販にもつなげていきたい。
シナリオレス型AIチャットボットサービス「コメンドリ」と生成AIを組み合わせ、顧客の社内文書のFAQを自動生成する仕組みも構築した。システム開発では、メインフレームなどで設計書などがなくなったシステムのソースコードをAIに読み込ませ仕様書を生成する仕組みも作った。ブラックボックス化したシステムの移行支援に活用できそうだ。
ブロックチェーンでは、複数企業が同じ基盤上で取引したり情報管理したりする際に最適なコンソーシアム型ブロックチェーンの仕組みを持っている。上新電機の配送業務にこの仕組みを導入したほか、長崎市にブロックチェーンの電子契約システムを導入した。今後はほかの自治体にも横展開できるとみている。
気象データのサービスも本格展開した。気象レーダーシステムで培ったデータ解析技術を使うことで、降雨予測や降雹(こうひょう)予測、突風検知などができる。6月からは三井住友海上と協業し、保険契約者向け「雹災緊急アラート」にサービスを提供した。新しい取り組みが事例として出てきているため、さらに広げていきたい。
24年度はデジタル化への投資がさらに進むとみている。鉄道や交通では顧客サービスの高度化に向けた検討が進んでいるほか、エネルギー領域ではVPP(仮想発電所)への取り組みも進む。当社が持つデジタルの知見や最先端技術を使った提案をしていく考えだ。
量子コンピューター関連も強化。量子暗号通信のQKDシステムをグローバル展開しており、北米、欧州、アジアのテレコムキャリア向けに強化したい。地場の金融機関などと連携し量子暗号通信ネットワークの構築事例をつくっていく。
あわせて量子インスパイアード最適化ソリューション「SQBM+」の導入も増やしていきたい。金融取引の最適化などのほか、創薬の領域でも活用が期待されている。パートナーと連携して新事業モデルを開発していく計画だ。