2024.08.29 3000キロを0.017秒で接続 NTTと台湾・中華電信が世界初のAPN国際間通信を実現
NTTの島田社長(左から3人目、スクリーン上)や中華電信の郭会長(左から2人目)が開通ボタンを押し、日台間のAPN接続がスタートした=29日、東京都武蔵野市
NTTと台湾・中華電信は29日、端末からサーバーまで全てを光信号で伝えるオールフォトニクス・ネットワーク技術(APN)を使って日本と台湾を結ぶ世界初の国際間通信を開通した。約3000キロメートルの⾧距離を片道約17ミリ秒(0.017秒)の超低遅延での接続に成功した。
両社は昨年10月、光技術による次世代情報通信基盤「IOWN(アイオン)」による国際ネットワーク接続の実現に向けた基本合意書を締結。それぞれが強みとする光伝送技術や無線伝送技術を基に、国際間ネットワーク構築に取り組んできた。
世界初となるAPN国際間接続は、台湾・桃園市内の中華電信の桃園データセンター(DC)と、東京都武蔵野市にあるNTT武蔵野研究開発センタまでの約3000キロをつなぐ。
NTTは同センタから日本国内の海底光ファイバー陸揚げ局まで、中華電信は台湾の陸揚げ局と桃園DCまでの APNを整備し、100ギガビット毎秒の光パスで実現した。
通信品質試験を行った結果、遅延は片道で16.92㍉秒と遅延ゆらぎはほとんど生じないレベルと確認されたという。
29日には、日台それぞれの会場で開通式が行われ、関係者が開通ボタンを押して通信がスタート。NTT武蔵野研究開発センタで記者会見したNTTの島田明社長は「IOWNの技術開発と日台のサービス展開を強力に加速させると期待している。今回の実績によって、他国での展開も進めていきたい」と力を込めた。APN通信で桃園市からあいさつした中華電信の郭水義会長は「高速大容量、低遅延、低消費電力のコミュニケーション基盤が実現され、次世代のブロードバンドネットワークに向けた画期的なマイルストーンになる」と語った。
今後は、日台に拠点を置く半導体分野などの製造業を中心にデータバックアップなどに活用するほか、NTT独自の大規模言語モデル「tsuzumi」など提供することにしている。
来年の大阪・関西万博のイベントで今回の国際間APNの活用も検討している。
中華電信は、各国の主要通信業者と連携し先端のICT(情報通信技術)をグローバル展開している。台湾の時価総額ベスト5に入り、電気通信業ではトップに位置する。
(9月2日付の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)