2025.01.08 【製造技術総合特集】EVの軽量化

市場が成熟してきたEV

素材の研究・開発盛ん

加工技術に革新もたらす

 地球温暖化による環境対策への対応を背景に、EV(電気自動車)へのシフトが世界的に進んでいる。EVはより少ないエネルギーで長距離を走行するために軽量化が重要になり、軽量化を実現する素材の研究・開発や加工技術の向上が進んでいる。

 EVの車両には、鉄や炭素、ニッケル、シリコン、マンガンなどの元素を微量に添加し、組織制御によって強度を高めた高張力鋼板の肉厚を薄くして用いることで軽量化が図られている。

 シリンダーなどのエンジン部材、バンパービームやドア、ルーフなどの外板の材料は、鉄よりも軽いアルミの使用も増えている。航空機やロケットなどにも採用されているアルミニウムよりもさらに軽いマグネシウムの利用も拡大傾向だ。

 インパネなどの内装部品やモーター部を固定するモーターハウジングなどの部材には、ポリプロピレンなどの樹脂に置き換えて軽量化するケースも増えている。ポリプロピレンは、機械物性バランスと成形性に優れており、低比重であることから、自動車用の内装部品や電装部品に適する。樹脂を炭素繊維で強化した複合材料であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)も期待されているが、加工技術が難しいため実装にはまだ少しかかりそうだ。植物由来となるバイオマスプラスチックの応用も研究が進められている。課題は、強度や耐熱性が挙げられる。

 EVで用いられる樹脂の接着には、表面を改質して接着性能を高める表面改質という工法が注目されている。被着材料表面に分子間力の強い吸着層を形成させる処理のこと。プラズマを照射する方法は、プラズマの持つ電気的に中性なラジカルの性質を利用して表面を改質する技術。プラズマは照射ガスの温度が低く、熱に弱いゴムや樹脂も素材の変質を起こすことなく有機汚染物の除去、表面改質や高機能化、接着強度の向上を実現する。

 素材加工にはレーザー加工機が広く使われているが、モーターやバッテリーなどの銅加工では青色レーザー加工が注目されている。

 EVの普及は、素材加工の技術イノベーションを加速させている。