2025.01.16 【計測器総合特集】東陽テクニカ 計測技術を駆使した高付加価値戦略 先進性支援ソリョーションの展開

ハブダイナモメーター

車両へのハブアダプター装着車両へのハブアダプター装着

車両へのハブアダプター装着車両へのハブアダプター装着

レーダーターゲットシミュレーター「ASGARD」レーダーターゲットシミュレーター「ASGARD」

レーダーターゲットシミュレーター「ASGARD」レーダーターゲットシミュレーター「ASGARD」

出張測定(オンサイト測定)イメージ出張測定(オンサイト測定)イメージ

提案力と開発力で企業価値向上

長期ビジョン実現めざす

 東陽テクニカは、2024年11月13日、同社初の長期ビジョン「BT600-2030」を発表した。技術商社としての提案力とメーカーとしての開発力を併せ持つ計測ソリューションプロバイダーという独自のビジネスモデルの優位性を基盤に、環境・社会に貢献する事業への注力、独自の高付加価値戦略を推進し、さらなる企業価値の向上を目指す。

■AD/ADAS技術が進む先進モビリティー分野

 注力すべき事業の中でも特に重点を置くのが先進モビリティーである。AD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)開発市場の活発化に伴い、その評価試験も高度化・複雑化している。東陽テクニカでは、23年子会社化したスウェーデン・ロトテスト社のハブダイナモメーターシステムの販売が好調で、北米の自動車メーカーをはじめ国内外で受注が続いている。

 一般的なシャシーダイナモとは違い、車両の各駆動輪部分に直接ハブダイナモメーターを取り付け、車の動力を直接計測できるため、より精密な結果を得ることができる。さらに、ステアリング操作や四輪独立した試験も可能なため、操舵(そうだ)を含めたさまざまな実路走行状態を再現でき、フル加速・緊急ブレーキなどの動作確認も実現可能だ。実路では難しい試験を、安定した屋内の環境で再現性高く行うことができる。

 東陽テクニカでは、このハブダイナモメーターシステムを軸にレーダーターゲットシミュレーターなどを組み合わせた独自の統合コントローラーシステム「ドライビング&モーションテストシステム(DMTS)」を自社開発している。ユニークセック社のレーダーターゲットシミュレーター「ASGARD」は、ソフトウエアを用いて試験対象の交通環境を再現し、衝突を回避すべきターゲットの情報を受け取り、それに応じたレーダー信号をリアルタイムで発生させてミリ波レーダーセンサーに認識させることで、実際に道路を走行しているように錯覚させることができる。

 このような機能も包括したDMTSを導入することで、実車とシミュレーションを組み合わせた試験(VIL:Vehicle in the Loop)が可能で、開発の早い段階で問題点を発見して修正したり、実走行試験をより完成度の高い状態で実施したりすることができ、開発期間の短縮やコスト削減につながる。なお、DMTSは、日本自動車研究所(JARI)での運用も始まっている。

■新たな分野として期待されるエアモビリティー

 今後、新たなモビリティー分野として期待されているのがエアモビリティーだ。eVTOL(電動垂直離着陸機)の社会実装に向けて官民で開発が進んでいる。機体の開発はもちろんのこと、空の移動における通信や電動化においてさまざまな認証が必須であり、その認証プロセスも含めて東陽テクニカの計測ソリューションで支援していく。

 飛行実現に向けて機体の小型化・軽量化が進むとともにその安全性の担保も必須だ。また、電動化において多くのモーターやインバーターが搭載され制御もより複雑となる。東陽テクニカは音振動、パワーエレクトロニクス、EMC、情報通信など幅広い事業領域の計測ソリューションを手掛けており、このような多岐にわたる評価試験を計測技術で複合的に支援していく。

 既にeVTOL用アイアンバードとして電動推進システム評価ベンチを独自に開発、販売している。当ベンチはシミュレーターと連動しながら負荷をコントロールすることで、ベンチ上でさまざまな飛行模擬を行うことができる。12個の被試験モーター、ESC(Electric Speed Controller)へ回転数指示を与え、対向するダイナモメーターで負荷をかけることで推進システムの性能評価を行う。短絡などの異常状態を模擬する機能も備え、異常時の挙動を評価することも可能だ。

 これまでに納入実績もあり、25年は国内でのデモ飛行実現に向けて飛行試験のサポートを進める。今後は、社会実装に必須である機体の型式認証などの支援も視野に認証サービスも手掛けていくことを予定している。

■高付加価値として広げる校正サービス

 東陽テクニカは校正ビジネスでも独自性を高め、グループ全体で高付加価値の提供をより広げていく。特に校正においては、ISO/IEC 17025校正機関としてA2LA(米国試験所認定協会)から認定を受け、精度の高い校正を実施している。昨年、子会社化した東陽EMCエンジニアリングも同様にA2LAから認定を受けており、東陽グループとして質の高い校正サービスを提供している。

 さらに東陽EMCエンジニアリングでは、EMC試験測定サービス、EMC対策支援サービス、海外認証取得支援サービスなどを展開している。モビリティー分野においては、EV(電気自動車)やAD/ADAS技術の開発が進むにつれ多数の車載電子機器が使われるようになり、電磁波干渉による誤動作や故障が重大な事故リスクにもなることから、EMCの重要性は高まり、試験の需要はさらに増大すると見込んでいる。

 東陽EMCエンジニアリングでは、川崎、つくば、三田(兵庫)の国内3カ所に電波無響室を備えた計測センターを保有、車載製品試験用無響室も整備し、その需要拡大にも対応している。

 加えて、日本国内だけでなく海外も含めての電磁環境やノイズの測定、調査が必要な現場に測定機器を持参し出張測定(オンサイト測定)も実施している。その内容は、電波無響室に搬入できない大型の建設機器、産業機器などから、サーバールームや太陽光発電設備などの環境測定、高周波利用設備設置申請用の測定など多岐にわたっている。

 40年以上におよぶ測定実績と経験から得られた知見をもとに、測定はもちろんのこと、その結果から考えられる対策なども提案するコンサルティングも含めた測定サービスを提供している。電波無響室とは違い、外来の電磁波がある不安定な測定環境においてもお客さまの支援を進めている。

 東陽テクニカは、長期ビジョンBT600-2030の中間地点である27年度9月期を最終年度とする中期経営計画「TY2027」を推進中で、先進モビリティーをはじめとした環境・社会に貢献できる事業への注力や、校正サービスといった高付加価値の提供など、持続可能な社会の実現とともに企業価値向上を目指した取り組みを加速していく。

 〈筆者=東陽テクニカ〉