2025.01.17 【情報通信総合特集】主要ソリューションプロバイダー各社に聞く25年の取り組み 電波新聞社アンケート

 電波新聞社は、主要ソリューションプロバイダー各社に2025年の市場、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)の取り組み、海外展開についてアンケート調査を実施し先の見通しを探った。アンケートは毎年新年と夏の2回行っているもので、各社の景況感の見方と施策、成果を定点観測している。今回は2024年12月16日から25年1月14日まで実施し32社から有効回答を得た。

AI関連、セキュリティーなど期待

 25年のICT(情報通信技術)関連市場は、24年から続き堅調に推移するとみられる。クラウドやAI(人工知能)など最新のデジタル技術を活用した投資は各業界ともに旺盛で、デジタルへの移行は今年さらに進みそうだ。

 アンケート結果によると、足元の受注状況はおおむね堅調に推移し10~12月は57%が「増加」と回答したが、今年1~3月は「増加」の回答が減り半数を割った。ただ4月以降は約7割が「増加」と回答し、7月以降は「大幅増加」を選択する企業も出ている。4月以降の見通しを明るくみている企業が多いことが明らかになった。

 25年の業種別の受注見通しは昨年から続き製造業が好調に推移しそうだ。大幅増加を含め「増加」を選択した企業は65%に上った。半面で製造業は「減少」を選択している企業もあり顧客層の違いなどでバラつきが出た。

 流通業は前回調査で「増加」の割合が2割まで下がったが再び4割に戻した。金融は大幅増加を含め「増加」が半数を超えた。公共は「大幅増加」を選択した割合が最も多く、約半数が増える見通しを示している。自治体システム標準化は今年ピークを迎えることから、自治体に強いベンダーは堅調に推移していくとみられる。

 市場の見通しについては「緩やかに成長し続ける」の回答が前回同様87%だった。一方、成長期間を25年中、25年3月ごろまでとみる企業もあり、前回同様に先行きに警戒感を示す動きも一定数あった。

 為替の影響については、出ていない企業が前回から1%減り48%だった。良い方向に出ている企業が前回の29%から30%となり、悪い方向で出ている企業は前回と同じ22%だった。輸出入のバランスにより一部で影響が出ている状況だが、円安基調が続いていることもあり回答企業の動きも変化はほぼなかった。

 25年に伸びる分野は前回調査同様に上位に入る分野に大きな変動はなく、「クラウド」「セキュリティー」「AI」となった。ただ、前回新設した「生成AI」がさらに大きく伸ばし前回4位から2位に浮上した。前回3位の「AI」は4位となったものの、生成AIとAIを加えるとダントツで、AI関連の期待は高い。

 前回大きく減らした「IoT」と「カーボンニュートラル」は再び増えたほか、SIやインダストリー4.0、BPO、受託開発などが前回から伸びた。逆に「5G関連」や「チャットボット」は回答数が減った。

 25年の重点施策は前回同様に「AI関連の取り組み」が首位となり、回答数も大きく伸ばした。前回4位に下げた「サービス事業へのシフト」は再び2位に浮上。前回2位の「セキュリティーの強化」は3位に順位を落とした。

 前回から回答が減ったのは「コスト削減」「アウトソーシング事業の拡大」などで、逆に前回回答数を減らした「デジタルマーケティング」「アジャイル開発」は回答数が増えた。前回新設した「量子コンピューターの取り組み」も選択した企業は増えた。伸びる分野と同様に25年はAIとセキュリティー、サービス化が成長の要になりそうだ。

DX関連サービスは「クラウド」が首位

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みについては提供している企業は100%(前回97%、前々回97%)となり、全企業が取り組んでいる。

 DX関連のサービスでは、前回同様に「クラウド」が首位で、「AIを組み込んだシステムやサービス」「IoT」と続いた。「モバイル対応システム」の回答数も増えた。

 DX関連の売り上げ状況については「伸びている」と回答した企業が大半を占めているが、前回同様に一部で「伸びていない」との回答も見られた。クラウドやIoTは「売り上げが伸びていない」との回答数が前回から減ったがAI関連は依然として売り上げにつながっていないという回答もあった。

 AIは今年から本格的に商用展開する企業も増えそうで、今後収益化につながる可能性は高い。

「脱炭素に向けた社内実践」が最多

 今回からGXの取り組みについて聞いた。GXの取り組みを進めている企業は78%で、最も多かったのが「脱炭素化に向けた社内実践」だった。次いで「SDGsの目標設定と実践」となり、ソリューション開発や展開に取り組む企業も出始めていることが明らかになった。サーバーレス化や資源循環といった取り組みを進めるところもあった。

 一方で取り組んでいない企業もあり、理由について聞くと「手が回らない」が最も多かった。「まだ先だと考えている」との回答も多く、企業によって環境への意識の違いが明らかになった。環境への取り組みの成果は92%が「出ている」と回答。GHG(温室効果ガス)削減に向けた取り組みで成果を出しているところが多く、ソリューション展開で受注につなげている企業もあった。

 サステナビリティー経営については75%が「必要で既に取り組んでいる」と回答し、「取り組み始めているが途上」の19%を含めると94%が何らかの取り組みをしていることが分かった。

 回答する全企業がサステナビリティー経営の必要性を感じており、この先さらに取り組みが進んでいくとみられる。

今後期待できる地域は北米・インド

 グローバルに関しては「海外展開している」と回答した企業が72%(前回67%、前々回75%)となり、撤退したところは3%(前回6%、前々回6%)あった。海外事業の多くは営業拠点とオフショアで、両方を展開しているところも多い。研究開発拠点を置くところもある。

 海外売上高比率は前回同様「0~3%未満」の企業が最も多く43%(前回48%、前々回45%)だった。2位は「3~5%未満」(19%)で、3位は「30%以上」(10%)だった。これは前回調査と大きく変動はなかった。

 海外売上高は「増えている」という回答が32%(前回42%、前々回35%)となった半面、「減っている」との回答は9%(前回11%、前々回13%)で着実に比率は減っている。増えている企業は需要拡大などに後押しされているところが大半で、減っている企業は中国などの市況の悪化影響を受けた。

 海外事業の今後については64%(前回55%、前々回52%)が「増やす」と回答し着実に増えてきているのに対し、「減らす」と回答した企業も4%あった。

 海外展開をしていない企業については、今後の予定は「ない」が38%(前回56%)だったが、「ある」との回答も12%(前回11%)あった。未定は50%だった。

 今後期待できる地域は、1位が前回同様に「北米」で回答数もさらに増やした。2位は前回4位に順位を落とした「インド」が再び浮上。前回同率で2位だった「ベトナム」と「タイ」が同率3位になった。西欧は前回から大きく回答数を増やしたほか、フィリピンも依然として注目されている。豪州の回答も増えた。その他でASEANを挙げた企業もあった。

アンケート回答企業一覧

 ▽アイ・エス・ビー▽アイティフォー▽伊藤忠テクノソリューションズ▽インターコム▽内田洋行▽SCSK▽NEC▽NECソリューションイノベータ▽NECネクサソリューションズ▽NECネッツエスアイ▽NECプラットフォームズ▽NSW▽大塚商会▽キヤノンITソリューションズ▽コア▽サイボウズ▽シーイーシー▽東芝ITサービス▽東芝情報システム▽電通総研▽日本事務器▽日立製作所▽日立システムズ▽日立ソリューションズ▽日立ソリューションズ・クリエイト▽ビジネスエンジニアリング▽富士通▽ユニリタ、ほか4社計32社