2025.01.17 【情報通信総合特集】2025市場/技術トレンド DX
日立システムズと日立プラントサービスは、自律走行ロボットで工場点検の自動化を目指す
業務効率化の「切り札」
各業種・業界で取り組み進む
デジタル技術を既存業務の変革や新ビジネスの創出につなげる「デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)」。実装の担い手となるソリューションプロバイダー各社は、企業の業務効率化や生産性向上に加え、医療サービスの高度化や人口減少といった社会課題にもデジタル技術で解決の糸口を提案。DXはあらゆる業種・業界に欠かせない「切り札」になっている。
大塚商会グループのOSKは、企業のDXを支援する主力サービス「DX統合パッケージ SMILE&eValue」を機能強化した。各種機能をワンパッケージで提供する同製品の強みを生かし、営業と経理業務の自動化を支援する。
DX統合パッケージは、販売・会計・人事給与を扱う基幹系のSMILE(スマイル)シリーズと、ワークフローやドキュメント管理を担う情報系のeValue(イーバリュー)シリーズのデータベースを統合。これまで独立していたシステムをまとめ、中堅中小企業のDXを支援する同社の主力製品。
「営業活動のDX」と「経理業務のさらなる効率化」をテーマに機能強化を図り、売り上げ情報や提案書、スケジュールを一元管理し、顧客情報を集約する「セールスマネジメント」を拡充したほか、全国銀行資金決済ネットワークのデジタル情報(EDI情報)を添付できるシステムのデジタルインボイス標準仕様に対応し、入金・支払い業務の自動化を推進した。
内田洋行は昨年末、中堅・中小企業向けの統合基幹業務システム(ERP)パッケージ「スーパーカクテルCoreシリーズ」を機能拡張した最新版の提供を始めた。受注受付業務の自動化を図ったほか、庫内作業の在庫業務を支援する物流オプションを強化。また帳票は自動でメール配信できるようにし、伝票添付文書の保管と検索機能も設けた。周辺ソリューションとの連携も強化し、データ利活用の操作性も高めた。
スーパーカクテルシリーズは1997年の発売以来、食品業や化学品・化成品などのプロセス製造業を中心に450業種、6000件超の導入実績を持つ主力サービス。労働者人口の減少や原材料・人件費の高騰といった経営環境の変化を背景に、6年ぶりに大幅な機能拡張を図った。
日立システムズと日立プラントサービスは、ロボット製造のスタートアップugo(東京都千代田区)と協業し、自律走行するロボットで工場点検を自動化する新たなサービスの開発に着手した。ロボットが工場内を巡回して設備を点検し、収集したデータを分析して設備運用の効率化につなげるシステムの構築を目指す。
ugoの業務DXロボット「ugo」はAI(人工知能)とカメラを搭載しており、あらかじめ設定した巡回ルートを自律走行し、工場内の設備を点検する。
医療やヘルスケア分野でもDXが進んでいる。NECは、医療機関および関係機関のDX推進を目指し、地域医療での生成AI活用を支援する「ヘルスケア生成AI活用プラットフォーム」を2月から順次提供する。病院経営の最適化や持続可能な地域医療をパートナーとともに実現する共創パートナープログラムも立ち上げ、サービス拡充と新たな価値創造につなげる。2030年度までに医療DX事業で100億円の売り上げを目標に掲げる。
海外で承認された新薬が日本で使えない「ドラッグ・ロス」の解決を目指し、製薬会社や医療機関と連携するのは富士通だ。医療データを活用して治験設計業務の効率化を図る取り組みで、9月から臨床研究中核病院などでサービスを展開している。
併せて製薬会社の治験特化型LLM(大規模言語モデル)で業務効率化を支援する新サービスの提供も始め、30年度に200億円の売り上げを目指す。
IT専門調査会社IDC Japanが、従業員300人以上の企業のIT担当者300人を対象に、データ活用・管理の現状を調査したところ、DXやDB(デジタルビジネス)の取り組みで一定程度の成果を得ている国内企業(先行企業)は6割、逆に取り組みが遅れ、成果も認識できていない企業(遅行企業)は2割弱だった。良好企業の8割強が一定程度以上データ活用できているのに対し、遅行企業では2割強にとどまり、データ活用の成否が業績につながっていることが裏付けられた。