2025.01.17 【情報通信総合特集】2025市場/技術トレンド GX

リコージャパンと穴吹興産が香川県さぬき市に施工中の太陽光発電設備

サトーと象印が導入を進めるマイボトル洗浄機サトーと象印が導入を進めるマイボトル洗浄機

注力領域として脚光

関連サービスの開発が加速

 脱炭素化を経済成長の両立を図る「グリーントランスフォーメーション(GX)」の動きが活発化している。GXに向けた取り組みの成否は経済競争力を左右するとみて注力領域として一躍脚光を浴びつつあり、IT各社は関連サービスの開発を加速させている。

 2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」達成を目指す政府は昨年末、GX推進に向けた40年までの長期戦略「GX2040ビジョン」の原案を示した。

 半導体やデータセンターなどを念頭に、エネルギー供給体制に合わせて産業を集積、送配電コストの低減や地域活性化につなげるのが狙いで、再生可能エネルギーなど「脱炭素電源」近隣での産業集積を目指し、企業誘致策を検討する方針が盛り込まれ、2月の閣議決定を目指すという。今後、原案に基づき民間企業の取り組みも活発化が見込まれている。

 リコージャパンは昨年11月、GXをCAGR(年平均成長率)30%以上の成長事業として、第3の柱に育てる方針を打ち出した。10月から従来のスマートエネルギー事業部をGX事業部に名称変更し、さらなるGXソリューションの展開を図っている。

 昨年末には、穴吹興産(高松市)と再生可能エネルギーに関する業務提携の契約を締結した。リコーグループでは「脱炭素社会の実現」「環境型社会の実現」をマテリアリティーに位置付けており、リコージャパンでは具体的なソリューションの展開に注力していく。

 同契約では、穴吹興産が発電事業者となり、香川県さぬき市に約3100kW/DCの非FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)発電設備を新たに設計・施工し、設備の運転、保守管理を担当する。

 オフィスでできる環境活動に取り組むのはサトーホールティングスだ。調理家電製造の象印マホービンと共同で、RFID(無線周波数識別)技術でマイボトルの使用回数を可視化し、利用を促す「マイボトル利用促進プロジェクト」の取り組みを進めている。

 同プロジェクトは、日常的に消費されるペットボトルやカフェのプラスチックカップを、繰り返し使えるマイボトルに置き換えることでプラスチックごみとCO₂削減を促す取り組み。両社と総合地球環境学研究所が協力して行動変容の効果を検証している。

 サトー本社(東京都港区)でのマイボトル利用者は2%にとどまっていたことに着目。社内に象印製のマイボトル洗浄機を設置し、従業員200人を対象に実証実験したところ、これまで年間約2万5000個が消費されてきたプラカップは1万個超の削減を実現。2%だったマイボトル利用率は62%まで飛躍的に拡大した。

 昨年11月には約1000人が勤務する総合設備大手の関電工本社が採用を決め、年間約36万本消費されてきたペットボトルの削減を目指すなど、活動は広がりをみせている。

 日立製作所は、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資への支援に乗り出した。サステナブルファイナンスプラットフォーム運営協会(SFPF運営協会)と連携して、23年から提供しているESG投資を促進するデジタル基盤に、IFRS(国際会計基準)のサステナビリティー開示基準に対応したテンプレート(ひな型)を追加し、国内で初めて提供を始めた。

 用意された項目に沿って必要事項を入力していけば、開示基準に沿った情報開示の基盤を作れる。開示に必要な情報を直感的に理解できる表や選択肢を用意することで、情報を正しく入力できるようにした。

 テンプレートにより、ESG情報開示を最小の手間で円滑に進められるよう支援し、ESG投資を行う運用機関と上場企業が抱えている課題解決につなげたい考えだ。

 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、廃棄物処理を可視化する資源循環プラットフォーム「StateEco(ステートエコ)」の提供を始めた。まず、家具・インテリア業界を中心にサービスを展開。今後、AI(人工知能)を活用した経路の最適化など機能を拡充していく。

 サステナビリティー(持続可能性)関連の法規制が施行されていることを背景に、サステナビリティーに関わる非財務情報の開示が定着。サステナビリティーデータを財務情報と同様に開示する需要が高まっている。

 調査会社IDC Japanによると、24年の国内のESGアプリケーション市場規模は460億円に上った。23~28年のCAGRは7.4%と予測され、28年には658億円になる見通しだ。