2025.01.24 【育成のとびら】〈42〉管理職の悩み 部長職クラスは「部門・チームの成果達成」が上位に

 前回、前々回は、新任・ベテランの課長職の悩みについて取り上げてきた。管理職に就任して年月が浅い管理職は「自身の判断」に、経験を積んだベテランは「部下とのコミュニケーション」に悩んでいる割合が、ほかの階層に比べて高いという結果が出た。

 今回は、より責任範囲が広く、重い「幹部候補」の悩みに焦点を当てていきたい。果たす役割が組織全体の行方を左右する幹部候補は、どのような悩みを抱えているのだろうか。

 当社ALL DIFFERENTとラーニングイノベーション総合研究所が2024年5月20日~7月17日に、415人の管理職を対象にアンケートを行った調査から探っていく。

 調査では、就任から3年以下の課長クラスを「新任管理職」、4年以上の課長クラスを「ベテラン管理職」、部長クラスを「幹部候補」と位置付けて、各階層の特徴などについて分析した結果を公表している。

 幹部候補に管理職としての悩みについて質問したところ、37.9%が「部門・チームの成果達成」を選んでおり、4割近くが成果達成の難しさを感じていた(図1)。この割合はベテラン管理職より21.5ポイント、新任管理職より15.2ポイント、高かった(図2)。

 幹部候補の管理職は、経営に近い視座から組織の課題などを捉えているため、より成果に対する意欲と関心が高まっていると推測される。

スキル強化の落とし穴

 管理職はさまざまなマネジメント業務を担っているが、それらは全て管理職の最も重要な役割である「継続的な成果創出」を果たすためのものだ。

 チームや部門の成果を上げるために、幹部候補の管理職が強化すべき知識とスキルは多岐にわたる。そのため、抱えている課題にきちんと焦点を当てた上で知識とスキルを獲得していかないと、せっかく貴重な時間を費やしても成果につながらないリスクがある。

 そうした落とし穴を回避するために有効な手段の一つとして、客観的な指標が得られる人材アセスメントの活用が挙げられる。

 幹部候補の管理職として不足している知識とスキルはないか、自身の行動が周囲にどのような影響を与えているのか、という点を主観と客観で可視化し、強化すべきポイントを特定するステップが重要になる。

 アセスメントで強化すべきポイントが明らかになったら、能力開発に取り組むステップに進むが、ここでも管理職個人の努力に依存しない仕組みづくりが必要だ。

 多忙を極める幹部候補だけに、知識・スキルの獲得を任せると、取り組みの方向性やマネジメントにバラツキが出てしまい、全体の成果創出へ効果が発揮できない可能性もある。

 そうならないために、知識・スキルを獲得するための定期的な研修を設定するなど、業務の一環として取り組める仕組みを構築することが必要になるだろう。

 次回は、管理職のマネジメント力強化に取り組んだ結果、個々の社員の努力を「チームでの成果創出」に転換できるようになった企業の事例を紹介する。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は2月第2週に掲載予定】