2025.01.28 「究極のパワーデバイス」ダイヤモンド半導体の早期社会実装実現へ

ダイヤモンド半導体を用いたパワー回路(出所:佐賀大学)

左から、佐賀大学 嘉数教授、佐賀大学 兒玉浩明学長、 CTC 原口専務執行役員、佐賀大学 豊田 一彦理事、 CTC 清水 大 テクノロジーリサーチ第2部長左から、佐賀大学 嘉数教授、佐賀大学 兒玉浩明学長、 CTC 原口専務執行役員、佐賀大学 豊田 一彦理事、 CTC 清水 大 テクノロジーリサーチ第2部長

今回の連携における双方の役割今回の連携における双方の役割

早期の社会実装が求められるダイヤモンド半導体早期の社会実装が求められるダイヤモンド半導体

 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と佐賀大学は、次世代の超高性能半導体として注目を集めるダイヤモンド半導体の社会実装に向けた研究で連携を開始する。昨年12月16日に協業に関する調印式を行い、今年から本格的な取り組みを実施する。連携を通じて、ダイヤモンド半導体の実用化を推進し、顕在化するエネルギー問題などの社会課題解決を目指す。

多くの可能性を秘めたデバイス

 ダイヤモンド半導体は、高いエネルギー効率を実現できる可能性を秘めたデバイスとして近年注目が集まっている。「究極のパワーデバイス」とも呼ばれ、パワー半導体として実用化が始まっているSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)と比べ、放熱性、耐熱性、耐放射性に優れている。用途として高性能のサーバーや通信機器、電気自動車や量子コンピュータなどへの活用が期待されている。優れた耐放射能性を生かし、原子力発電所や宇宙分野での活用も見込まれる。

 佐賀大学はダイヤモンド半導体に関する研究に長年取り組んでおり、2023年には世界で初めてダイヤモンド半導体デバイスを用いたパワー回路を開発した。CTCはITソリューション企業として、さまざまなソリューション提供を通じてDXやデジタル社会の進展に貢献してきた。今回の連携により、CTCはダイヤモンド半導体研究の開発段階から携わる。この連携を通じて、今後さらなる技術革新や有効なサービスの提供を推進する。

AI普及による電力問題が顕在化

 近年、生成AI(人工知能)の普及とともに、膨大な消費電力が電力需要に影響を与えている。温室効果ガス排出量の増加により、カーボンニュートラルの達成が困難になるとの見方もあり、社会課題として懸念され始めた。こうした社会課題を解決するため、電力サプライチェーンにおける電力損失や発熱を抑え、エネルギー効率の向上を図ることが求められる。ダイヤモンド半導体の特性を生かすことで高効率・低損失のデバイスを実現し、AIサーバーなどの省エネ化への貢献を目指す。

 ダイヤモンド半導体を研究する佐賀大学の嘉数誠教授は「ダイヤモンド半導体が実現すれば、現在幅広く使われているシリコン半導体よりも約5万倍の高出力電力、高効率のパワー半導体にすることができる。宇宙通信用途や量子コンピュータの記憶素子への応用も検討されるなど、最先端分野での活用にも期待が掛かる。今回の連携を通じて、社会実装に向けた取り組みを加速させる」と話す。

規格標準化や量産化へ向け体制整備

 今後、佐賀大学はCTCからダイヤモンド半導体研究への委託契約などを通じた支援を受けるとともに、CTCへの技術情報提供を行う。CTCはこの連携に対する賛同者を募り、規格の標準化や量産化の推進に向けた体制を整備する。CTCの原口栄治専務執行役員は「今回の連携により、ダイヤモンド半導体の研究が加速し、早期の社会実装につながることを期待している。そのための仕組みづくりやグローバル展開を支援し、ダイヤモンド半導体の可能性を世界に広げていく」と話す。