2025.01.31 AI需要の拡大に対応 マイクロンがシンガポールにHBM新工場

シンガポールにあるマイクロンの既存NAND工場

 マイクロン・テクノロジー社はこのほど、高帯域幅メモリー(HBM)の新たな先進パッケージング工場の建設に着工した。建設地はシンガポールにある同社の前工程工場に隣接する予定。HBMの先進パッケージングに関わる工場は、シンガポール初となる。新工場の操業は2026年に開始される予定。さらに同社は、AI(人工知能)の普及拡大を背景にさらなるHBMの需要増を見込んでおり、2027年から先進パッケージングの総生産能力を拡張する計画だ。今回の新工場着工により、シンガポールの半導体エコシステムとイノベーションはさらに強化される。

HBMの重要性

 IEEEによると、HBMは、3D積層技術を利用したコンピューター・メモリー・アーキテクチャーの一種を指す。グラフィックス処理、ネットワーキング、AIなどの高性能コンピューティング・アプリケーションにおいて、従来のDRAMに比べて大幅に高い帯域幅を実現することができる。これらのアプリケーションでは、低消費電力を維持しながら大量のデータに高速でアクセスする必要がある。さらに、その実装には、スタックド・メモリー・ダイをベース・ロジック・ダイに接続するためのスルーシリコン・ビア(TSV)が必要になることが多い。

 HBMは、生成AIの台頭により需要が拡大している。HBMはAIアプリケーションの要件を補完する、より大きなストレージ容量を備えている。AIアプリケーションは高度化とともに複雑化しており、アプリケーションを遅延なく実行するために、より高度なコンピューティングが必要になっている。したがって、HBMは、普及拡大が進むAIアプリケーションを実行するために不可欠なものとなっている。

より多くの投資、より多くの雇用

 マイクロンのサンジェイ・メロートラ社長兼最高経営責任者(CEO)は「AIの導入が広まるにつれて、先進的なメモリーとストレージ・ソリューションの需要は今後も増え続けるだろう」と話す。さらに、メロートラCEOは「シンガポール政府の継続的な支援により、このHBM先進パッケージング工場への投資は、今後拡大するAI需要に対応する当社の立場を強化する」と述べた。

 マイクロンのHBM先進パッケージングへの投資額は、10年後およびそれ以降に約70億ドル(約95億シンガポールドル)に達し、当初は約1400人の雇用を創出し、将来的には推定3000人の雇用を創出すると見込まれる。これらの新たな雇用によって、パッケージング開発、組み立て、テスト業務などの機能が強化されることとなる。

 シンガポール経済開発庁(Singapore Economic Development Board)のプン・チョンブーン会長は声明の中で、「マイクロンの投資は、世界の半導体サプライチェーンにおける重要なノードとしてのシンガポールの競争力が高く評価されていることを反映している。マイクロンの投資はシンガポール初のHBM先進パッケージング工場となる。これは世界のAI成長に貢献することを可能にする。これはシンガポールとマイクロンとのパートナーシップを拡大し、シンガポールの半導体エコシステムをさらに強化するものになるだろう」と話す。

 マイクロンのシンガポールにおける将来の拡張計画は、NANDの長期的な製造能力の強化も視野に入れる。市場の需要に合わせてHBMとNAND双方の生産能力増強に柔軟に対応していく。

 既存のシンガポール工場は、世界経済フォーラムによって先進的な第4次産業革命のけん引役であり持続可能性の象徴として認定された世界初の前工程半導体工場。新しいHBMの先進パッケージング工場は、マイクロンの持続可能性へのコミットメントに沿って建設される。新工場は、温室効果ガスの削減、水のリサイクル、廃棄物の循環利用(リデュース、リユース、リサイクル、リカバリー)などの技術を備えていることが特徴。AIベースのインテリジェント・ソリューションによって高度に自動化され、エネルギー・環境デザインにおけるリーダーシップ(LEED)認証要件を満たすように設計されている。