2025.03.04 「月経リズム」を就寝中の衣服内温度で把握 パナソニックと日大が実証
下着に装着すると、就寝中に自動計測できる。
パナソニックで生活家電を手掛けるくらしアプライアンス社は、日本大学工学部電気電子工学科准教授の村山嘉延氏と共同で、就寝中に腹部周辺の衣服内の温度を測り女性特有の月経リズムを把握できることを実証した。そこで得られた成果を生かし、年内の製品化を視野に検討を進め、女性が健康に過ごすための環境づくりを後押ししたい考えだ。
両者の共同研究で用いた試作品は、温度センサーを搭載したウエアラブルデバイスで、パナソニックが開発した。就寝時に下着などにクリップで装着しやすいようコンパクトな外観を実現。約4センチメートルの正方形で、厚さは約1.8センチメートル。重さも、電池を含め約22グラムに抑えた。
こうした特徴を備えた機器を生かし、生体データの解析を専門とする村山氏と連携。2008年から衣服内温度計を開発・販売してきたキューオーエル(長野県東御市)もアドバイザーとして加わり、技術特性についての知見を共有した。
研究で着目したのは、「二相性」と呼ばれる温度変化。女性の基礎体温は低温期と高温期に分けられ、この二つの状態を一定の周期で繰り返している。
研究では、女性44人の協力を得て、就寝中に衣服内の温度を約3カ月間にわたり計測。そこで得られたデータを分析した結果、月経リズムに連動する二相性を確認できた。さらに衣服内の温度と基礎体温を比べたところ、「高温期への移行日」に差がないことも分かったという。
女性は、ホルモンの影響を受けながら排卵と月経からなる特有のバイオリズムを刻んでいる。この月経リズムは心身の健康に影響を与えるため、適切なリズム管理が重要となっている。ただ、多くの女性が基礎体温計測を習慣化できていないのが現状で、無理なく使い続けられる計測手段が望まれていた。
同社ビューティ・パーソナルケア事業部ビジネスデザイン部事業開発課長の図師和彦氏は説明会でこうした課題を踏まえ、「女性自身や社会が月経リズムを把握することに気づくきっかけを提供していきたい」と意欲を示した。
村山氏は「パナソニックと共同検証することで質の高いデータを集められた」とした上で、得られた成果を米国電気電子学会(IEEE)の論文誌を通じて発信する意義も強調した。