2025.03.24 AIでサステナ業務を効率化 メンバーズが脱炭素経営を後押し
新サービスを紹介するメンバーズの西澤専務執行役員(右隅)や我有・脱炭素DX研究所所長(左から2人目)ら=東京都中央区の本社
生成AI(人工知能)を活用して企業のサステナビリティー(持続可能性)に関する業務を後押しするサービスが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の現場を支援するメンバーズ(東京都中央区)から登場した。脱炭素を含む関連情報を開示する業務の負荷を軽減するニーズが高まる中、専門情報の検索から温室効果ガス排出量の削減までを総合的にサポートする。
3月に提供を始めた新サービスは「サステナビリティAIアシスタント」で、アカウントを取得後に情報漏えいの心配がない安全な環境で簡単に利用を開始できる。膨大なサステナビリティー関連情報の検索や確認から回答の素案作成までをチャット形式で行えるようにすることが特徴だ。
活用シーンの一つが、市場トレンドを調査したり、規定やガイドラインを確認したりする場面。省庁や主要組織といった信頼できる機関が示すエビデンス(証拠)とともに、回答を生成してくれる。さらに、社内外の問い合わせに応える「FAQ(よくある質問)」の作成も手助けしてくれる。
日本企業に迫る開示基準
背景には、サステナビリティ―情報の開示を法制化する世界各国の動きがある。トランプ第2次政権の誕生で脱炭素の停滞が懸念されてはいるものの、多くの企業がサステナビリティー経営を重視する傾向は続くと見られている。日本でも、民間団体の「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)」が開示基準づくりを進めており、3月末までに最終化する予定だ。まずは2027年3月期から、東京証券取引所プライム市場に上場する時価総額3兆円以上の企業を対象に基準が適用。対象企業には、自社拠点分の温室効果ガス排出量だけでなく、サプライチェーン(供給網)全体の排出量「スコープ3」の開示も求められるようになる。
これに伴い、企業のサステナビリティ―担当者が携わる情報開示の業務が増大する見込みで、業務を省力化する対応が急がれていた。こうした中で同社は、東京都中央区の本社で開いた説明会で、サービスのデモンストレーションを披露。デモで希望する問い合わせを選び、スコープ3に関する質問を行うと、素早く回答が提示。合わせて、参照データも表示された。
既に同社は中期事業戦略で、デジタルスキルを兼ね備えたGX(グリーントランスフォーメーション)を担う人材を27年3月期までに1000人育てるプロジェクトを掲げ、資格試験の学習時間を約3割削減するなどの効果を獲得している。企業のサステナビリティー業務を支援する「GXコンサルタント」が担う専門性の高い業務については、引用資料の検索などにかかる工数を約8割減らしたという。
説明会で脱炭素DX研究所の我有才怜所長は、企業に求められる気候変動対応の最新動向に触れ、温室効果ガス排出量の可視化にかけるコストや人的資源を圧縮し、排出量の削減計画へ投資する「削減実行フェーズ」へ移行しつつあるとの認識を強調。「非効率」「属人的」「慢性的な人材不足」という課題を抱えるサステナビリティ―業務から脱却し、「業務の生産性を高めることが急務となっている」とも指摘した。
専務執行役員で脱炭素DXカンパニー社長の西澤直樹氏は、「AIをうまく活用できる人材も同時に提供し、より専門性の高いアウトプットを行えることが強みだ」と力説。こうした「ハイブリッド型」の優位性を発揮しながら、製造業など幅広いの業種の情報開示ニーズに応えていくことに意欲を示した。