2025.05.16 AIエージェントで顧客対応を革新 モビルスがトランスコスモスと新会社
左から新会社とモビルスで社長を務める石井氏、トランスコスモス共同社長の牟田正明氏
コンタクトセンター(顧客対応窓口)向けサービスを手がけるモビルスは、トランスコスモスと折半出資し、AI(人工知能)エージェントのプラットフォームを提供する合弁会社vottia(ボッティア、東京都港区)を設立した。顧客対応できるAIエージェントを開発・運用し、企業と消費者の接点づくりを後押しする。
両社が共同出資で4月に設立した新会社は、人間のように柔軟にやり取りできるAIエージェントをコンタクトセンター向けに提供。オペレーターが担うシステム操作を、一連のタスクとして自動処理できるようにする。
具体的には、各種の業界や業種に適した「業務特化型AIエージェント」を提供。業務課題をスピーディーに高精度で解決できるようにする。
さらに、企業の事業基盤を支えるトランスコスモスのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスと連携し、「運用一体型のサービス」であることを強みとする。
新会社の社長に就任したモビルス社長の石井智宏氏は、自律的にタスクをこなすAIエージェントがパフォーマンスを発揮できるよう生成AIを使いこなす難しさを強調。こうした課題を踏まえて、運用一体型のサービスに力を入れる方針も示した。
さらに、多彩なUI(ユーザーインターフェース)を提供できることも売り。モビルスが得意とするチャットボット(自動応答システム)などのソリューションと連携し、こうした仕組みを実現する計画だ。
新会社は、秋頃までに初期版となる基幹システムをリリースする目標を掲げた。そのシステム上に、修理やライフラインなどの業務特化型パッケージを順次乗せていく。
コールセンター大手のトランスコスモスは、企業と顧客の接点づくりで重要なCX(顧客体験価値)を高めるDX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォーム「trans-DX for Support」の導入拡大も狙う。石井社長は、この計画と組み合わせた提案を主軸としながらAIエージェント事業を加速したい考えで、「50社への導入を目指す」と意欲を示した。
両社が連携する背景には、急成長するAIエージェント市場がある。24年に52億ドルに達した市場は、34年には1966億ドルに伸長すると見込まれている。新会社はこうした追い風に乗って各業界の特化型AIエージェント市場を開拓し、それぞれでシェア獲得を狙う。
トランスコスモスが昨年実施した「消費者と企業のコミュニケーション実態調査」の結果によると、消費者がチャットを利用する意向は半数以上と高い一方、実際の利用経験は28%にとどまり、企業の環境整備が追いついていない実態が浮かび上がった。さらにAIの進化を背景に自己解決を求める消費者のニーズも高まる傾向にあり、問題解決能力の高いAIエージェントが望まれていた。