2025.06.12 宇宙の謎に迫る超大型望遠鏡、伊マイクロゲートと米バイコーが中核技術を提供
ESOの超大型望遠鏡「ELT」
国際的な宇宙探査の動きが加速する中、ヨーロッパ南天天文台(ESO)がチリで建設中の超大型望遠鏡「ELT」が注目を集めている。直径39メートルの主鏡を備え、2028年の観測開始を予定。遠方の恒星や銀河の微弱な光を集め、宇宙の起源解明につなげることを目指している。
ELTの特長は、地上設置によるメンテナンス性と、極めて大型の光学系を搭載できる点。補償光学システムには、伊マイクロゲートと共同開発する、大気のゆらぎによって歪んだ光の波面をリアルタイムで補正し、鮮明な観測画像を得る仕組みを搭載する。補正するためのミラーは直径2.4メートル、厚さ約1.9ミリメートルという極薄設計で、5316個のモーターで30ミリメートル間隔で精密に制御される。
電源供給には、米バイコーのDC-DCコンバーターモジュール「DCM3623シリーズ」が採用され、各モジュールは最大36チャネルのモーター制御を行う。高密度、高効率な電力変換技術により、限られたスペースでの放熱・配線課題に寄与している。
ELTは、ハッブルやジェームズ・ウェッブなどの宇宙望遠鏡とは異なる地上設置による観測だ。国際協力のもと宇宙の謎に迫る取り組みは、半導体・電子部品産業にとっても重要な舞台となっている。
<執筆・構成=半導体ナビ>