2025.10.19 オムロンとNTTドコモビジネス、「信頼できるデータ連携」で製造業の課題解決を後押し
オムロンとNTTドコモビジネスは、企業間で安全なデータ共有を実現できるよう支援するソリューションの提供に向けた連携を始めた。オムロンが開発した製造現場向けエッジコントローラーとNTTドコモビジネスのネットワークサービスを組み合わせたソリューションで、製造業の企業が現場で抱えるデジタル化や脱炭素化などの課題解決を支援する。
両社が提供するのは「セキュアデータ連携ソリューション」。信頼性が担保されたデータの共有・連携が可能な基盤を構築し、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量が実質ゼロ)の実現やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を後押しする。
今回の連携でオムロンは、製造現場で収集した設備データを分析・可視化できる新開発のエッジコントローラー「データフローコントローラ DXシリーズ DX100-0010」を提供する。国内メーカー5社の制御装置「PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラー)」や通信規格「イーサネット」に対応する機器であれば接続が可能。専用のプログラムやソフトウエアを使わず、簡単なマウス操作でデータをやり取りできるため、特別な知識も必要ない。
東京都内で開かれた説明会で同社インダストリアルオートメーションビジネスカンパニーの朴帝映コントローラ事業部長は、「製造現場の技術者もIT技術者も自分の知識を生かして使えるようになっている」と強調した。
NTTドコモビジネスは、データを安全に共有するためのネットワークやセキュリティーサービスを提供する役割を担う。巧妙化するサイバー攻撃に備え、多様なセキュリティー機能とネットワーク機能を統合した「docomo business RINK」に、インターネット通信を監視し脅威を検知・遮断する新機能を追加。12月には、セキュリティー機能を標準搭載したIoTサービス「docomo business SIGN」の提供を始める。
高まる情報開示の機運
近年では欧州連合(EU)が、原料の安全性や製造過程での環境負荷などを消費者に開示するための仕組み「デジタル製品パスポート(DPP)」の義務化を決めるなど、情報を適正開示する機運が高まっている。また、欧州が主導する自動車産業に特化したグローバルな企業間データ連携基盤「Catena-X(カテナエックス)」が構築されるなど、安全な情報共有に向けた取り組みも加速している。
NTTドコモビジネスの境野哲エバンジェリストはこうした動きを概観した上で、「新しいプラットフォームの策定という波に上手く乗ることで、製造業のDX化を進めていきたい」と意欲を示した。
多くの製造現場では、複数メーカーの旧型機器が使用されているため、データ収集が難しいのが実情だ。さらに、IT分野の知識を持つ技術者の不足という課題にも直面している。さらに、工場内で集めたデータは企業秘密が多数含まれているため、セキュリティー対策を強化する課題も突き付けられている。そこで両社は2022年10月から、Catena-Xへ接続するための実証実験や製造現場へのヒアリングなど、ソリューションの提供に向けた取り組みを進めてきた。
今後両社は、DXや脱炭素化に取り組む製造業のニーズを開拓していく。環境規制への対応が求められる自動車部品や、製造過程で多くのエネルギーを使用する半導体関連企業などから引き合いがあるとみている。
また、東京大学大学院情報学環の越塚登教授とも連携。オムロンのコントローラーを使ったセミナーなどを通して、製造業もITもわかる人材の育成を進める予定だ。