2026.02.23 【複合機ソリューション特集】複合機、データハブへ進化 AI連携で高付加価値競争が本格化
国内の複合機市場は、コロナ禍の停滞から脱し、DX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革を背景に回復基調にある。2025年の複合機(複写機含む)の出荷実績は前年比ほぼ横ばいで下げ止まりを見せた。一方、ソフトウエアやサービスなどのソリューション領域は好調に拡大している。複合機はさまざまなソリューションを実現するデバイスとして機能強化が進んでおり、生成AI(人工知能)の本格化が「スマートMFP化」を促進、高付加価値ソリューションへの期待が高まっている。環境面での取り組み強化や、開発・生産面でのメーカー間連携の活発化など、業界の新たな枠組みも生まれている。
市場は横ばい、ソリューションは拡大
業界団体のビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)がまとめた2025年の複写機・複合機の年間出荷実績は、台数が44万台(前年比98.7%)、金額が1967億円(同101.1%)と横ばいで推移した。コロナ禍で大きく落ち込んだハード需要も、ハイブリッドワークの定着などを背景に持ち直しつつある。電子化やペーパーレス化の進展でプリントボリュームは減少傾向にあるものの、DXや働き方改革を推進するソリューション需要が拡大し、市場の成長材料となっている。
複合機は「紙とデジタルの橋渡し」として、紙情報をデジタル化する起点としての役割が一段と高まっている。クラウド連携の深化により、文書管理やワークフロー効率化を実現するデバイスとして存在感は増している。

AI実装でエッジデバイス化
今後、AI活用の本格化や生成AIの実装が進めば、複合機はAI時代のエッジデバイスとしての役割をさらに高め、新たなビジネスモデル創出につながる可能性がある。
従来、複合機は印刷速度や画質、耐久性などの基本性能で競われてきた。しかし、こうした性能だけでは「各社横並びで差別化は困難」との見方が強く、ソリューション領域が競争力を左右する大きな要因となっている。単なるデジタル化にとどまらず、デジタル化されたデータをどう利活用するかが重要であり、複合機とAIの連携による新たな価値創出が期待されている。
日本企業では依然として紙文化が根強く、図表や画像などの非構造化データも多い。これらを利活用可能な構造化データへ変換し、価値ある情報へ転換することがAI活用の鍵を握る。
各社、生成AI戦略を加速
こうした中、複合機メーカー各社はAI戦略の強化を加速している。リコーはLLM(大規模言語モデル)の開発にいち早く取り組み、700億パラメーターのモデルを開発。さらに昨年末には、中堅・中小企業でも導入しやすいオンプレミス向けのコンパクトな高性能LLM(270億パラメーター)を発表した。米グーグルのオープンモデル「Gemma 3 27B」をベースに開発し、エフサステクノロジーズのPCサーバー向け生成AI基盤に搭載、リコージャパンが実装支援を行っている。
富士フイルムビジネスイノベーションは、生成AIに特化したソリューションを提供するneoAIと提携し、企業固有データを活用した業務特化型ソリューションを強化。中堅・中小企業向けクラウドサービス「FUJIFILM IWpro」では、生成AIを活用したデータ抽出サービスをオプションで提供し、データ取り込みや業務自動化、外部システム連携、取引先との情報共有を支援する。
キヤノンは、生成AIを活用したオフィス向け複合機の保守サービス「スマートサポートチャット」を26年中に日本でも提供開始する。12万件以上のデータベースを活用した独自AIエージェントにより、保守・サポートサービスの高度化を図る。
キヤノンマーケティングジャパンは、全社員が米マイクロソフトのコパイロットを利用できる環境を整備し、社内コンテストを通じて業務効率化のノウハウを横展開。画像処理技術とAIを組み合わせたソリューションにも注力する。
東芝テックのAI専門子会社ジャイナミクスは、マッキンゼーのAI部門と連携し、米半導体大手エヌビディアのGPU(画像処理半導体)を用いた小売業向けリアルタイム分析基盤の構築に着手。企業向け生成AI活用支援サービスも提供している。
シャープは、ハード中心から「スマートワークプレイス」への構造転換を推進。デジタル複合機の新ラインアップ「BPシリーズ」に、生成AIを活用した「eAssistant Guide」を搭載し、操作方法やトラブル対応を対話形式で提示する。
コニカミノルタジャパンは、外部パートナーとのAI連携を強化し、自社開発にこだわらない柔軟な技術取り込み戦略を進める。
京セラドキュメントソリューションズは、東京と大阪でAIや最新技術を体感できる展示会を開催し、AIとDXを活用した業務効率化・生産性向上ソリューションの訴求を強めている。
アナログの紙業務と最新のデジタル技術をAIで橋渡しし、企業のDXを強力に支援しようとする各社の戦略が鮮明になっている。










