2026.07.25 日立、「シリコン量子コンピューター」の量産化へ基盤技術開発始動 インテル・産総研と連携 

日立製作所はインテルや産業技術総合研究所と連携し、シリコン量子コンピューターの産業化を見据えた開発を推進

 日立製作所は、半導体製造技術を利用できる次世代計算機「シリコン量子コンピューター」の量産化を見据えた研究開発を開始すると発表した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業に米インテルの日本法人と共同提案し、採択された。大規模で高信頼な同計算機の実現に必要な基盤技術の確立を目指す。

 日立とインテルは、NEDOの公募事業「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業 (社会課題解決に向けた量子コンピュータ次世代機開発・実証の加速)」の実施予定先として決まった。実施期間は2029 年3月まで。

 量子コンピューターは、創薬や物流の最適化など従来計算機だけでは解決が難しい課題を解決に導く革新技術として期待が高まっている。その実用化に向けては、計算単位「量子ビット」を多数集積し、安定的に動作させる技術が重要だ。シリコンを用いた量子ビットは、既存の半導体製造プロセスを生かせるため、大規模化に適した方式として注目されている。

 両社は、量子ビットを安定動作させるためのチップ構造を設計する。インテルの先端半導体製造技術「18A」に基づく量子デバイス製造プロセスを生かし、研究・試作段階で課題となる「デバイスごとの性能のばらつき」の低減などに取り組む。一連の技術開発により、量子ビットを100個以上搭載するチップの設計と実装に必要な基盤技術を確立する。

 さらに、シリコン量子コンピューターの量産も視野に入れ、チップの設計に必要な製造条件や設計上のルールをまとめた「プロセスデザインキット(PDK)」の開発にも取り組む。量子ビット数の増加に伴う配線や実装面積の課題に対応するため、極低温環境で動作する量子コンピューター向けの高密度な実装技術の開発も進める。多くの量子ビットを効率よく実装できる方法を確立し、1000量子ビット級システムの実現に向けた基盤づくりを進める計画だ。

 また日立は、産業技術総合研究所と協力し、シリコン量子コンピューターの実験環境に対応したクラウドシステムを開発し、産総研量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT、茨城県つくば市)を通じた公開を目指す。これにより、外部の研究者や技術者も量子ビットチップや制御装置の実験環境を利用できるようにする。

 日立は開発する基盤技術をもとに、2027年度までにクラウドで公開し、段階的にサービスを展開することを狙う。28年に100量子ビット、30年には量子計算の誤りを訂正する「量子誤り訂正符号」を実装した1000量子ビット級試作機の開発を目指す。