2026.10.12 【大邱慶北経済自由区域庁(DGFEZ)】大邱慶北経済自由区域、投資誘致を加速 8地区の先端産業集積生かす

ICT・SW企業が集積する寿城アルファシティ

 大邱慶北経済自由区域庁(DGFEZ、金熙錫〈キム・ヒソク〉庁長職務代行)は、対象企業を絞った投資誘致活動を強め、グローバル投資の拡大に乗り出している。

 2008年に開庁したDGFEZは、大邱と慶北で計8地区、18.41km²の経済自由区域を造成・運営する。ICT・ロボット、バイオ・ヘルスケア、未来モビリティを3大中核戦略産業として育成している。24年末時点で1052社が入居し、年間売上高は14兆2000億ウォン、輸出額は1兆6000億ウォンに達した。産業用地の分譲率も86%となっている。

1.即時投資と将来の成長を支える環境

 DGFEZの強みは、短期間で投資を実行できる産業用地と企業支援体制に加え、中長期的な成長を支える先端産業の集積を備えている点にある。

 投資企業が迅速に事業を進められるよう、許認可や規制特例などを支援する。大邱広域市と慶尚北道が推進する大邱慶北統合新空港と連携し、物流、人材、研究基盤も継続的に拡充する計画だ。新空港の開港後は、DGFEZの8地区から韓国内外への交通・物流アクセスが一段と向上すると期待される。

大邱慶北経済自由区域庁(DGFEZ)

 大邱・慶北は、電子・半導体産業が集積する亀尾、二次電池・鉄鋼産業の浦項をはじめ、自動車・造船産業の蔚山、機械産業の昌原など、韓国を代表する産業クラスターを結ぶ広域産業ベルトに位置する。サムスン、LG、POSCO、現代自動車などのグローバル企業を軸とするサプライチェーンとの連携にも適する。

 DGFEZは、こうした産業基盤を生かし、投資企業が韓国市場に定着し、韓国企業との協業を通じてグローバル市場へ事業を広げられるよう支援する。

2.3大中核戦略産業を重点育成

 ICT・ロボット、バイオ・ヘルスケア、未来モビリティの3分野を中心に、対象企業の発掘から投資協約、着工、定着までをきめ細かく支える「ワンチーム(One-Team)投資対応体制」を運営している。

 ICT・ソフトウエア集積地の寿城(スソン)アルファシティは機会発展特区に指定され、ICT・ロボット・AI企業を対象とした税制優遇や規制緩和が進む。大邱テクノポリスに整備される国家ロボットテストフィールドとも連携し、AI(人工知能)・ロボット企業の誘致を拡大する。

ロボット・未来モビリティー産業が集積する大邱テクノポリス

 7月には国土交通部の「スマート都市特化団地」に指定された。規制特例や規制サンドボックスを活用し、企業が新技術を実際の都市空間で実証し、事業化できる環境も整える。

 浦項融合技術産業地区では、強小研究開発特区やバイオ特化団地と連携し、バイオ・ヘルスケア分野の研究開発と事業化を支援する。浦項工科大学(POSTECH)や放射光加速器など世界水準の研究基盤に加え、浦項の二次電池・鉄鋼産業の集積も活用できる。

 企業の成長と定着に向けた支援にも力を入れる。企業認証や知的財産権、国内外の展示会・見本市への出展、技術コンサルティング、海外販路開拓などを支援。規制革新協議会や企業訪問型の相談窓口を通じ、企業が現場で直面する課題の解決にも取り組む。

3.先端企業の成長が競争力を実証

 DGFEZでは、多様な先端企業が技術力と事業性を生かして成長を続けている。

 寿城アルファシティに入居するICT企業のイージース(EGIS)は、韓国で初めて地理情報システム(GIS)を構築した。3次元デジタルツインと生成AIを融合した技術の高度化を進め、25年には同地区の入居企業として初めてKOSDAQ市場に上場した。

 空間知能(Spatial AI)企業のファーミティ(FARMITY)は、ミリ波レーダーを活用した3次元行動分析技術「FIRA Pose」により、米国で開かれた「CES 2026」でイノベーションアワードの2部門を受賞した。

 浦項融合技術産業地区のエイエンポリ(ANPOLY)は、POSTECH発のベンチャー企業。環境負荷の低い素材となるナノセルロースを開発・生産し、年間1000t規模の生産基盤を構築した。

 企業誘致の成果も相次ぐ。26年1月には、ホアダーコリア(華徳韓国)が永川先端部品素材産業地区で1000万ドル規模の投資協約(MOU)を結んだ。

 4月には、特殊合金鋼を手がけるBKエムソル(BKAMSOL)が、浦項融合技術産業地区内の1万196m²の用地に83億ウォンを投資し、合金粉末・線材製造工場を建設することを決めた。水平連続鋳造(HCC)工程を導入し、輸入製品に比べて30%以上の価格競争力を確保する。東南アジアや欧州、米州などへの進出も目指す。

 未来モビリティ分野の大規模投資も本格化している。フランスの自動車部品メーカー、ヴァレオ(Valeo)との合弁会社となるカペックヴァレオ(KAPECVALEO)は25年、永川ハイテックパーク地区に1600億ウォンを投資することを決めた。30年までに電気自動車用バッテリーシステム(BSA)の生産ラインを構築し、約100人を新規雇用する計画だ。

未来モビリティー産業の拠点、永川ハイテックパーク地区 

 自動車部品メーカーのアジンカインテック(AJIN CAR IN TECH)も232億ウォンを投じ、寿城アルファシティへの本社移転を決めた。25年6月には、日本のゲームIPパブリッシング企業、Gホールディングスが同地区に韓国法人のゲーム開発スタジオを設立することを決定した。

 未来モビリティや先端素材からICT、コンテンツまで、韓国内外の幅広い企業を誘致し、投資分野を広げている。

4.日本企業との協力網を拡大

 DGFEZは日本を主要な投資誘致対象の一つと位置付け、企業や関係機関とのネットワークを広げている。

 日系企業・機関や日本貿易振興機構(JETRO)ソウル事務所の関係者を招き、浦項のバイオ、二次電池、鉄鋼産業や、永川の未来モビリティ産業の現場を紹介してきた。DGFEZの投資環境、外国人投資向けの優遇策、研究基盤などを実際に確認してもらう現場重視の誘致活動を展開する。

 ソウルジャパンクラブ(SJC)とは、在韓日系企業・機関の関係者を対象とした投資説明会を大邱で共同開催し、AI・ロボット、ICT・ソフトウエア分野の協力について意見を交わした。

 日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)のIT企業視察団による寿城アルファシティ訪問に合わせ、入居企業と日韓IT企業の交流会も開いた。10月には日本の対象企業を招き、投資地区や産業現場を紹介する現地視察型の誘致活動を予定している。

 現地訪問型の説明会や地区ツアーに加え、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の海外貿易館、在韓外国商工会議所などのネットワークも活用する。26年は外国直接投資(FDI)と国内投資を合わせ、3000億ウォン以上の誘致を目指す。

 キム庁長職務代行は「昨年までの投資誘致の成果は、単なる協約にとどまらず、実際の着工、生産、雇用につながっている点に大きな意味がある」と説明。「26年は誘致戦略をさらに高度化し、経済自由区域を拡大する。日本をはじめとするグローバル企業から信頼される投資拠点として、DGFEZの存在感を高めたい」と話す。

5.産業別に特化した8地区

 DGFEZは大邱4地区、慶北4地区の計8地区を運営し、地域ごとの産業基盤と研究施設を結び付けた産業クラスターを形成している。

 寿城アルファシティには、ICT・ソフトウエア、AI・ロボット分野を中心に約340社の企業や研究施設が集積する。首都圏以外では韓国最大のICT・ソフトウエアクラスターへ成長した。

 大邱テクノポリス地区は、大邱研究開発特区(INNOPOLIS Daegu)の技術事業化を担う中核拠点。ロボット、未来モビリティ、先端機械分野の企業やDGISTなどの研究・教育機関が集まり、公共技術の移転や事業化を支援する。国家ロボットテストフィールドの整備も進む。

 国際ファッションデザイン地区には、ファッション・先端繊維関連の企業や大邱国際学校、韓国ポリテク大学などが立地する。産業、教育、居住の機能を備えた複合地区となっている。

 新西先端医療地区は、先端新薬、医療機器、ヘルスケアに特化する。K-MEDI hub(大邱慶北先端医療産業振興財団)や新薬開発支援センターなどの研究開発支援機関、医療・ヘルスケア企業が集まる。

 慶山知識産業地区には、先端メディカル・医療機器、建設機械・部品分野の企業や研究機関が入居し、ファッションテック融合クラスターの構築も進む。

 浦項融合技術産業地区は、バイオ、部品・素材、研究開発に特化する。強小研究開発特区やバイオ特化団地と連携し、細胞膜タンパク質研究所、グリーンワクチン実証支援センターなど、バイオ分野の研究・事業化施設が集積する。

 永川先端部品素材産業地区には、自動車部品、電気、機械、金属などの先端部品・素材分野を中心に73社が入居している。

 永川ハイテクパーク地区では、未来モビリティ、自動車・航空部品産業を重点的に育成する。自動車部品メーカー、物流施設、研究開発機関を結び付けた未来型先端産業団地として整備が進む。

 既存8地区の産業クラスターを高度化するとともに、経済自由区域の拡大にも取り組む。第2寿城アルファシティや浦項融合技術産業地区の拡張をはじめ、軍威ハヌル都市、K-2跡地、亀尾経済自由区域地区、慶州先端革新産業地区などの新規指定を推進する。地域の先端産業をけん引する新たな成長拠点として育成する計画だ。

6.企業と人材が共に成長する環境

 産業基盤に加え、外国人投資企業と役職員が暮らしやすい環境の整備も進める。

 浦項融合技術産業地区の拡張予定地域では、英国の名門校「Christ College Brecon(CCB)」のインターナショナルスクール・キャンパス設立を推進している。慶山知識産業地区では現代(Hyundai)プレミアム・アウトレット、寿城アルファシティではロッテの複合ショッピングモールが計画され、商業・文化機能も拡充する。

 地域の大学や研究機関と連携した、産業ニーズに対応する人材育成も強化している。大邱市のソフトウエア人材育成事業や、慶尚北道の「K-U Cityプロジェクト」と連携し、現場で活躍できる実務人材の育成と地域への定着を促す。企業と大学による産学連携も支援する。

 DGFEZは、産業クラスター、研究開発、人材、生活環境を有機的に結び付け、企業の投資から定着、成長までを一貫して支援する。グローバル先端企業が韓国市場に進出し、事業を拡大できる投資拠点として競争力を高める方針だ。