新しい生活様式に対応

　シャープは、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、新しい生活様式へのニーズに対応する特徴的な幅広い商品・サービスを武器に、ビジネスチャンスの獲得に力を入れる。「新型コロナウイルス感染症を未曽有の危機と受け止める一方、新生活様式に対応したビジネスチャンスとしてキャッチアップを図り、お客さまの業績拡大に貢献したい」（シャープ 宮永良一常務兼シャープマーケティングジャパン取締役副社長）と話す。

　20年度は、新型コロナウイルス感染症の影響によって、合展などの大規模営業イベントの中止や新製品の発売延期、さらには全国の大型量販店などで休業措置が取られたこともあり、厳しい状況が続いた。ただ、緊急事態宣言が段階的に解除された5月以降は、需要も急速に回復し前年を大きく上回る伸長を見せている。「当社においても、業界全体の伸長を上回る勢いで手応えを感じている」と宮永常務は話す。

　新型コロナウイルス感染症については、早期の収束が見通せない状況にある中で、外出自粛による〝巣ごもり〟需要をはじめ、新しい生活様式に即した様々なニーズが生じた。代表的な事例として「ヘルシオ ホットクック」「ヘルシオデリ」が挙げられる。ヘルシオ　ホットクックは、休校措置やテレワークの拡大により、家事負担が増大した多くのユーザーに魅力的な商品として人気が高まった。

　今年4月以降もミールキットのヘルシオデリとともに、前年比約3倍の販売台数で好調に推移している。さらに、在宅時間が長くなったことによって、家の汚れが気になるユーザーが増え、5月以降、コードレススティック掃除機「RACTIVE Air」も急拡大している。また、空気清浄機に代表される「プラズマクラスター」搭載商品群も好調だ。家庭や職場の空気環境対策として需要が急増しており、2月度以降は前年を大きく上回る状況が続いている。

　空気清浄機と呼べる、唯一のエアコン「Airest（エアレスト）」は現在、特に注目が高まっている。空機清浄機の需要伸長とともに商品への注目度も高まり、6月度の販売台数は前月の約3倍まで伸長した。「エアコンの本格需要期に合わせ、6月末から7月中旬までテレビCMなどのプロモーションも展開しており、エアコンの買い替え提案も一層強化を図っていく」（宮永常務）考えだ。

　テレビは、今夏の世界的なスポーツイベントは延期されたものの、巣ごもり需要もあり4Kテレビが好調に推移した。今後、約10年前のエコポイント時に購入されたテレビの買い替え需要が本格化すると予測され、8Kテレビと合わせて「大画面化」「高画質化」の提案強化を継続する。

　「8K／4Kキャラバンカーイベント」もリニューアルし、活用範囲を広げ認知拡大を図る。「8Kテレビは、昨年発売したBW1シリーズが好調に推移しているほか、消費者からの要望に応え新たに有機ELテレビの発売も開始した。出足は好調で、今後も消費者の要望に合わせて、液晶と有機ELの両面展開でシェア拡大を目指す」と宮永常務は話す。

　AIoT家電の拡大も順調に推移している。宮永常務は、AIoT家電について「昨年度経済産業省のLIFE　UPプロモーション対象のスマートライフ家電キャンペーンを展開したこともあり、対象商品のネット接続率が大幅に上昇した」という。

　「昨年度まで全国で実施してきた〝AIoTトラックキャラバン〟をリニューアルし、今年度は全国の量販店店頭で実施するイベント形式に切り替える」（宮永常務）ことで、より一層の認知拡大を図る。

　このほか、「新型コロナウイルス対策のため、販売店から好評だった吉本興業との店頭イベントは、自粛せざるを得ない状況だが、新たな盛り上げ策を検討している」（宮永常務）という。

　特別定額給付金の支給により、家電製品に対する消費者の購入意欲も高まっており、テレワークやオンライン授業の拡大によるノートPCの需要増もある。宮永常務は「当社は需要の変化に対応し、提案可能な商品を数多くそろえている。新型コロナウイルス感染症を未曽有の危機と受け止める一方で、新生活様式に対応したビジネスチャンスとしてキャッチアップし、お客さまやご販売店、社員とその家族の健康を守りながら、会社の業績拡大にも貢献していく」と話す。