2020.08.20 最新トレンド・レクチャー第6回「AI」
AI(人工知能)
新入社員のつぐみは、今日も取材や執筆に忙しい。
ある日、「AI」という言葉を毎日記事でたくさん書いていることに気がついた、つぐみ。
気になって他社の記事を読んでみたり、家電量販店に行ったりすると、どこでもAIという言葉があふれていることが分かった。そこで、改めてAIについて勉強しようと思い、先輩記者のカゲに尋ねた。
カゲさん! 早速ですが「AI」って何ですか?
人工知能のことだよ。
それは分かってるつもりです!
でも、「AI搭載洗濯機」があったり、「AIが仕事を奪う」なんて記事があったり、「AIが世界征服を企てて戦争を起こす」なんて漫画もあったりして、実態がよく分かりません!
こいつ、また面倒なことを言い出しやがったな……。こんな時は、あのじいさんだ。
誰が、おじいさんじゃ!!
いけねえ! オンライン会議中だった。
ドクター、カゲさんが「しょうもないおじいさん」なんて失礼なこと言って申し訳ありません。
君もよっぽど失礼じゃな。
まあいいわい。AI(Artificial Intelligence)は、直訳すると「人工知能」の意味じゃ。しかし、その定義は「モワっ」としているのも確かじゃろう。
総務省のホームページによると、AIとは「人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術といった広い概念」とされておる。
要するに、コンピュータに人間の思考プロセスを学習させて、仕事をやらせることの総称と言えるんじゃないかの。
ちなみに、AIと一緒によく耳にする「機械学習」というのは、AIの「学習」のことですか?
そう。人間が「学習」するのと同じようなことじゃ。
機械学習では、コンピュータが、入力されたデータからパターンやルールを見つけ出す。そして、そのパターンやルールを新たなデータに当てはめることで、「ははーん、このデータではこんなことが言えるな」と予測したりできるようになるのじゃ。
ドクター、何をおっしゃっているのか、分かりませーん。
むむ……。
例えば、「ニンジン」と「ジャガイモ」の写真があったとする。これは、それぞれ違うモノじゃ。これは分かるわな?
それぐらいは、わかります!
よろしい。機械学習では、まずニンジンとジャガイモの写真を、コンピュータにたくさん覚えさせる。
次にコンピュータに「人参は赤いんだぞ」「ジャガイモは丸っこいんだぞ」などと特徴をアドバイスするんじゃ。これを「特徴量」という。
すると、コンピュータは「特徴量」をヒントに、写真を見てニンジンとジャガイモの区別をつけることができるようになるんじゃ。
ドクター、これもよく聞く「深層学習」というのは、機械学習の中に含まれるのですか?
そうじゃ。深層学習は「ディープラーニング」とも言われブームになった技術じゃ。
先ほど、ニンジンとジャガイモの区別の仕方を特徴量としてアドバイスすると言ったが、深層学習では、特徴量自体もコンピュータが発見するのじゃ。
この場合は、コンピュータが自分で「あれ?どうも色に着目した方がよさそうだな?」とか「形が違うぞ」と自分で判断する。それで、ニンジンとジャガイモを区別できるようになるわけじゃ。
アタマいい!
ただし、深層学習ができるためには、以前も言ったようにビッグデータ、膨大なデータが必要なんじゃ。ビッグデータと深層学習は切っても切れない仲なんじゃ。
ということは、「機械学習」こそがポイントになるわけですね。
うむ。機械学習には大きく分けて三つの学習法がある。
「教師あり学習」
「教師なし学習」
「強化学習」
じゃ。
ちなみに、つぐみは「教師逃亡学習」ですよ。先生が嫌になっちゃって逃げる。
くっくっくっ……。
うるさいわ!(バキッ)
×●△☆※…
「教師あり学習」とは、先ほどのように「こういう色や形をしたものがニンジンだよ」というラベルを学習データに付けてコンピュータに覚えさせる機械学習じゃ。
次の「教師なし学習」は、正解のラベルを付けない学習用データを使うことをいう。コンピュータに「自分で考えろ!」というわけじゃ。
「強化学習」は、特訓みたいなことですか?
うむ。「強化学習」というのは、コンピュータが一定の環境の中で試行錯誤をさせて、正解のときは報酬を上げるのじゃ。
このプロセスを繰り返すことで、何が長期的によい行動なのかをコンピュータに学習させる。
例えば、数年前にAIが碁で人間に勝ったというニュースがあっただろう。あれは、強化学習と深層学習を組み合わせた方法が使われた。これは「深層強化学習」と言われているんじゃ。
正直、聞けば聞くほど分からなくなってきました。
お前は本当に勉強ができないヤツだな。
しかし、一つだけ分かったことがあります。AIって、要は「人間のような思考をするコンピュータ」のことですよね?
そう言ってしまえば身もふたもないが、AIとは「一つのことについて人間のような思考をして処理するコンピュータ」と言う方が近いじゃろう。
だからといって、AIは人間のように何でもできるわけではないことも知っておくべきじゃな。
それじゃ世界征服は……。
漫画で描かれている「世界征服をたくらむAI」とは、「一つのことを人間のように」ではなく「あらゆることを人間そのものとして」行うAIのことじゃ。
それは「汎用(はんよう)人工知能(AGI / Artificial General Intelligence)」と呼ばれる。残念ながら、まだ実現されていない。
現実の世界でAIと呼ばれているのは、さっき言ったような「一つのことについて人間のような思考をして、こなすコンピュータ」、つまり「特化型人工知能」と呼ばれているものなんじゃ。
汎用人工知能は、いつかできるのでしょうか?(ワクワク)
分からん。研究している人たちはもちろんいる。ただ、ビジネスなどを考えると、特化型人工知能の研究を進めるのが得策といえるじゃろうな。
分かりました! また学習させてください!
※本記事は総務省「情報通信白書令和元年版」を参考にしています。
イラスト ⓒくり ひろし