2020.08.31 【ソリューションプロバイダ特集】市場動向 クラウド

ハイブリッド/マルチ型移行が大きく進展

 ニューノーマル(新しい日常)、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)による経営革新も、全てクラウドサービスが基盤となっている。クラウドサービスを抜きにして、働き方改革もDXも実現しない。今後、企業の情報基盤はクラウドへのシフトが加速し、ハイブリッド型、マルチクラウド型へと移行が大きく進展する。

 IDC Japanは、国内パブリッククラウドサービス市場を予測している。これによると、19年の市場規模は前年比22・9%増の8778億円と大きく伸びている。

 また、19-24年の年間平均成長率(CAGR)は18.7%で推移し、24年の市場規模は19年比2.4倍の2兆644億円になると予測する。

 19年は「従来型ITからクラウドへの移行が進むとともに、モバイル、Webアプリケーションなどの新しいデジタルサービスのインフラストラクチャとして、IaaS/PaaSが高い成長を遂げている」とIDC Japanでは分析している。

 20年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は、1兆円の大台を超える見通しだ。コロナ禍がクラウドサービスを促進するのも間違いない。

 今後、企業の従来型ITからクラウドサービスへの移行は、これまでの情報系システムから基幹系システムへ進展する。さらにDXによってクラウドサービス市場は多様化、拡大する。

 クラウドサービス市場は、これまでプライベートクラウドとパブリッククラウドに大きく分けられていたが、両クラウドサービスを同時に活用するハイブリッドクラウド、複数のクラウドサービスを組み合わせたマルチクラウドが主流になってくる。

 パブリッククラウドは、クラウド事業者が提供するクラウドサービスを企業や個人が「共有」して利用するサービス。ユーザーは、ハードや通信インフラを持たずに、クラウド事業者が提供するクラウド環境を利用する。システムがブラックボックスであるため、障害発生時への不安を指摘する向きもあったが、現在は信頼性が格段に高まり、パブリッククラウドを利用するシステム領域は、情報系システムから基幹系システムへと多様化、拡大している。

 特にDXなどの新規のビジネスは、パブリッククラウドの活用が必須となるが、ミッションクリティカルな業務を行う銀行など金融業界でも活用が進んでいる。

 複数のクラウドを利用する「マルチクラウド」「ハイブリッドクラウド」への移行が加速する中で、課題も指摘されている。パブリッククラウド、プライベートクラウドを連携させたハイブリッドクラウド、さらに多種あるクラウドサービスを同一の環境で利用するマルチクラウド化が進む一方で、クラウドごとに異なるセキュリティ設定など、従来以上にセキュリティ、ガバナンス管理が求められる。マルチクラウド時代のセキュリティ強化が今後の大きなテーマとなってきている。