2020.08.31 【ソリューションプロバイダ特集】 20年後半の市場見通し 電波新聞社アンケート

 電波新聞社はこのほど、主要ソリューションプロバイダ各社に20年後半の市場の見通し、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)の取り組み、海外展開、働き方改革についてアンケート調査を実施し、方向性を探った。アンケートは毎年、新年と夏の2回行っているもので、各社の景況感の見方と施策、成果を定点観測している。今回は11日から27日まで実施し、41社から有効回答を得た。

新しい日常に合わせ再び成長軌道

 前回のアンケート時は、20年の見通しは東京五輪・パラリンピックが開催されることを前提に拡大基調とみる動きが大半だったが、今年に入ってからの新型コロナウイルス感染拡大により市場環境は一変してしまった。ただ中期的な見通しではニューノーマル(新しい日常)に合わせて市場が動きだすとの見方もあり、今年後半から来年にかけては再び成長軌道に乗ってくるという見解が目立った。

 全体的な受注の見通しをみると、今年の10月以降から「増加」という回答が増え始め、21年4-6月には3割以上の企業が「増加」を見込んだ。業種別の20年後半の受注見通しは、公共分野や通信分野は比較的安定しており、前年並み以上を見通す企業が8割に上った。一方の流通業は、前回調査では増加する回答が多かったが、今回は7割以上が「減少」という回答。コロナでサプライチェーンの影響を受けた製造業の見通しは決して暗くなく、8割以上が前年並み以上の回答だった。

 市場の見通しについては、これまで「穏やかに成長し続ける」との回答が最も多く半数近くを占めていたが、今回は15%と大幅に減った。ただマイナスは限定的との見方も強く、「9月頃までマイナス」「20年中はマイナス」の回答を踏まえても21年以降は回復基調になるという見方だ。

 20年に伸びる分野は、前回調査から同様に「クラウド」「セキュリティ」「AI(人工知能)」が上位三つを占めた。AIは前回圧倒的に多数票を集めたが、今回の調査では落ち着きを見せた感じだ。第5世代高速通信規格5Gは引き続き注目分野になっている。逆にこれまで回答が限定的だった「BCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)」が一気に増え、前回の回答から3倍以上になった。ITアウトソーシングの回答も前回から増えた。

 一方、20年の重点施策は、前回から続き「働き方改革の取り組み」が1位となった。2位以下は「セキュリティの強化」「クラウドコンピューティング事業の取り組み」になった。前回急浮上した「サービス事業へのシフト」は減少したが、引き続き重点分野として捉える企業が多い。現在はコロナ禍でどのように対応するかが課題になっている企業が多いため、テレワークなどで必要になるセキュリティやクラウドなどが上位に来ているとみてよいだろう。

 「フィンテックの対応」に関しては前回から大幅に減り、優先度が下がっていることが浮き彫りになった。

DX関連サービスは「クラウド」が最多

 DXへの取り組みについては、提供している企業は88%(前回92%)となり、大半が取り組んでいる。

 DX関連のサービスでは「クラウド」が最も多く「AIを組み込んだシステムやサービス」と「IoT」が同率2位で傾向は前回から変わっていない。

 DX関連の売上げ状況については「伸びている」と回答した企業が大半を占めた。半面で各分野とも売上げが伸びていないという回答も一定数あった。

 現在取り組んでいないが、今後取り組みたいサービスとして最も多かったのが「AIを組み込んだサービス」だった。

 今後予定しているサービスについては、ニューノーマルを見据え「クラウド」「IoT」を挙げた企業が目立った。

働き方改革取り組み、「テレワーク」がトップ

 働き方改革については、全社が取り組みを進めていた。

 19年から働き方改革関連法案が施行されたこともあり、取り組みはかなり進展しているとみられる。

 働き方改革の取り組み内容については、「テレワーク」がトップ。今回から「人事制度の見直し」を項目に加えたこともあり、制度の見直しが2位だった。「AI、RPAの導入による作業の削減」も引き続き多い。その他の回答では「社員の健康増進施策」「長時間労働の是正に向けた仕組みづくり」「業務品質の向上施策」「副業制度」「専門委員会」「時差出勤」なども挙がった。

 働き方改革の効果については、93%が「出ている」(前回96%)と回答。具体的な効果について「残業が減った」が最も多く、「社員満足度が上がった」「生産性が上がった」と続いた。「意識が変わった」「出張などが減りコストが下がった」といった回答もあった。

 ソリューションプロバイダ各社は、いち早く働き方改革に取り組んできた背景がある。ただ十分に成果が出ていないとの意見もあり、「業務量とのギャップが埋まらない」といった課題に直面しているところもあるのは事実だ。

 コロナで一気に在宅勤務などが拡大したひずみも出ていることがあり、こうした部分の是正も今後必要になってきそうだ。

「海外展開している」企業は66%

 グローバルに関しては「海外展開している」と回答した企業が66%(前回72%)だった。海外事業の多くは営業拠点の開設とオフショアだが、子会社を展開しているところや研究開発拠点として展開する企業もあった。

 海外売上高比率は「0-3%未満」の企業が最も多く54%。次いで「3-5%未満」(15%)、「7-9%未満」(11%)となった。

 海外売上高については「増えている」との回答が23%(前回31%)となったが、半面で「減っている」との回答が58%と、前回回答の9%から一気に増えた。減少した企業の大半が新型コロナウイルスの影響を挙げており、ここでもコロナが影を落とした形になっている。

 海外展開をしていない企業については、引き続き展開する予定のない企業は4割で、未定と回答した企業が約6割あった。改めて国内に注力する動きがあるほか、引き続き海外展開を視野に入れている企業もあり、企業によってバラつきがある。コロナで事業撤退した企業もあった。

 今後期待できる地域については、前回から続いてベトナムが1位。以下「タイ」「インド」「北米」と続いた。前回増加した「フィリピン」は再び後退。その他では「ミャンマー」を挙げた企業が目立った。

アンケート回答企業一覧

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