2020.09.08 【テレビ特集】巣ごもりで視聴時間増高画質・高音質の機能やサービス提案

4Kテレビを中心に大画面高画質テレビの提案が加速

 主要テレビメーカー各社は、高精細4Kテレビを中心に大画面、高画質テレビの販促を強化する。今年は新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛要請などの影響で、家庭でのテレビの視聴時間が増えていることもあり、テレビの販売が堅調に推移。11年のアナログ放送停波、エコポイント終了に伴う駆け込み需要で購入したテレビの買い替え時期にもなっているため、各社は巣ごもりの際に様々な映像コンテンツを高画質・高音質で楽しめるような機能やサービスの提案にも力を入れていく。

 20年は当初、東京オリンピック・パラリンピック(東京2020大会)の開催年となっていたことから、テレビ各社は一大スポーツイベントを契機に大画面高画質テレビの販売促進をもくろんでいた。ところが新型コロナの感染拡大で東京2020大会は延期。さらに海外工場の閉鎖などで製品供給も困難を来すなど、市場環境は一変してしまった。

 4月以降は外出自粛が続いて家電市場にも少なからず影響が出てきたが、半面でテレビに関しては当初の想定とは異なる形で追い風が吹き、市場は堅調に推移してきている。

 巣ごもりによりテレビの視聴時間が増えたこと、外出しないことで支出が抑えられたこと、10万円の特別定額給付金などもありテレビの買い替えが加速。リビングなどに設置する大型テレビを4Kテレビに買い替える需要が拡大するとともに、販売が低迷していたハイビジョンテレビも拡大している。

 ここ最近は寝室や子ども部屋、書斎などではテレビを置かず、スマートフォンやタブレット端末、PCなどで映像視聴を代用するケースも増えており、2台目、3台目としての需要が減り、中小型ハイビジョンテレビの販売は減少傾向が続いていた。ところが、コロナ禍で個々の部屋でもテレビや動画視聴の時間が増えたことからハイビジョンテレビの販売も好調となった。

 電子情報技術産業協会(JEITA)の7月のテレビ出荷統計によると、薄型テレビ全体では前年同期比30.7%増の52万4000台と好調に推移。高精細4Kテレビは同35.2%増の29万台と好調に推移し薄型テレビ全体に占める4K比率は55.4%、金額構成比は80.9%となった。有機ELテレビは同16.3%増の4万4000台、112億円となっている。4Kテレビだけでなくハイビジョンテレビの販売も出荷台数増加を後押ししており、今後もこの流れはしばらく続くとみられる。

4Kテレビ中心に新製品投入

 主要各社も夏商戦から4Kテレビを中心に新製品を投入し、大画面高画質テレビの訴求を強化している。18年12月から始まった新4K衛星放送対応チューナは全ての主要モデルに搭載され、AI(人工知能)の活用も進展する。各社はより高画質で自然な映像が楽しめる4K有機ELテレビをはじめ、4K液晶テレビの新製品を用意。超高精細8Kテレビの製品群も増えてきている。

 パナソニックは「4Kビエラ」シリーズで液晶と有機ELで製品を展開。新4Kダブルチューナ内蔵の4K液晶テレビと、4K有機ELテレビともに画質と音質に磨きがかかる。有機ELは独自のパネル制御技術をさらに強化して高コントラストな映像を実現したほか、上位のHZ1800シリーズは独自スピーカにより立体音響が楽しめる。

 ソニーは、4Kブラビアシリーズの20年モデルとして4K有機ELと4K液晶の6シリーズ全16機種を展開する。有機ELは映像処理エンジンを強化し高画質化に磨きをかけるとともに、画面自体を振動させて音を出す音響技術を進化。画音一体を前面に出す。4K有機EL、4K液晶ともに40V型台から65V型、液晶では75V型まで幅広くそろえ、多様化する需要に応える。

 東芝映像ソリューションは、4Kレグザシリーズで液晶と有機ELで幅広いサイズ展開をする。クラウドのAIを使った高画質化技術を搭載し、映像コンテンツに合わせて最適な画質調整をする特徴を持つ。

 放送を全部録画して見逃しをなくすタイムシフトマシンといった、独自の機能で差別化を図る。動画視聴に特化したハイビジョンテレビも投入するなど多彩なモデル展開で攻勢をかける。

 シャープは、超高精細8K液晶テレビ「アクオス8K」の最上位機を刷新し、新開発のパネルと画像処理エンジンによって、キメ細かい臨場感のある映像を実現した。

 これまでは4Kと8Kの液晶テレビを中心に展開してきたが、今年は4K有機ELテレビ2機種を投入し、有機EL市場に本格参入した。8Kで培った技術を生かした独自の制御技術を搭載して高画質化を図っている。

 ヤマダ電機と独占販売契約をする船井電機は、4K放送の録画ができるハードディスク内蔵の4K有機ELテレビを発売する。2テラバイトのハードディスクを内蔵し、4K放送の裏番組録画なども実現するなど、他社とは違う機能で差別化を図る。

 海外メーカーでは4K有機ELテレビで先行してきた韓国LGエレクトロニクス・ジャパンは、有機ELと液晶で8Kと4Kのモデルを発売。有機ELでは、初となる8Kチューナを内蔵したモデルを用意し、有機ELで世界最大サイズとなる88V型と8Kで初となる77V型を、液晶でも75Vと65V型の8Kテレビを発売した。

 東芝映像ソリューションの親会社でもある中国ハイセンスの日本法人ハイセンスジャパンは、新4K衛星放送チューナ内蔵の液晶テレビなど20年モデルを発売し攻勢をかける。

 これから年末商戦に向け、テレビの市場はさらに盛り上がりを見せそうだ。