2020.10.16 【5Gがくる】<15>超高信頼・低遅延によるワイヤレスMCの実現 ①

 近畿一円の所領をはじめ石高が羽柴秀吉より勝っていた明智光秀は、織田信長が最も信頼していた家臣といえる。にもかかわらず、本能寺の変は起こった。信長は何をもって家臣を信頼していたのだろうか?

 その謎解きは歴史小説に譲ることにして、ここでは「5Gはどれほど信頼できるのか?」ということについて考えてみたい。

 5Gには①超高速(eMBB)②超高信頼・低遅延(URLLC)③多数同時接続(mMTC)-の三つの要件があることは以前から述べてきた。今回はそこから、URLLCの謎解きをしたいと思う。

高信頼度と低遅延

 URLLCは無線区間において「高信頼度」と「低遅延」の二つを同時に満たすこととしている。ここで、何をもって「高信頼度」と言うのか、正しく理解しておこう。

 信頼度とは「与えられた期間において要求機能を遂行できる確率」と定義されている。たとえば、電話システムの信頼度はアナログ交換機の時代からファイブナイン(99.999%以上の稼働率)とされている。それは、電話サービスを提供できなくなる30分以上のシステムダウンは20年間で1回以下と非常に厳しい。

 筆者もNEC入社後にデジタル交換機の開発をしていたころ「交換機が止まったら、110番や119番をかけられなくなる。人が死ぬんだぞ」と、上司からよく言われた。つまり、人命に関わるといった、機能の停止が許されないミッションクリティカル(MC)なシステムの場合には、ファイブナインの高信頼度が求められるわけだ。

 5GのURLLCもまたしかりで、ファイブナインつまり「パケットデータ送信(32バイト以上)における送信成功率99.999%以上」の高信頼度を求めている。

 5G回線の稼働率がファイブナインであるということは、連続して送信されたパケットデータの99.999%以上が正しく受信されることだ。これは「パケット損失率0.001%以下」ということで、パケット損失を10万パケット当たり1パケットに抑えるということになる。

 法人向けインターネットサービスのパケット損失率の保証がおおむね0.1-0.2%程度であることからみても、かなり厳しい要件であることが分かる。さらに、発表されたばかりのeURLLC(拡張型URLLC)ではシックスナインの高信頼度が求められる。

遠隔医療や手術

5Gによるワイヤレス・ミッションクリティカルの例(遠隔手術支援)

 5GのMC関連ユースケース(誤作動や停止が許されない利用例)としては、まず、医療現場における遠隔医療や遠隔手術、災害現場におけるドローンの遠隔制御や遠隔救急などが挙げられるだろう。

 産業応用としての期待も大きい。衝突を回避する自動運転をはじめ、危険な工事現場における建機の遠隔操作やトラックの遠隔自動走行、製造工場におけるロボットの遠隔制御など、いずれもニューノーマル社会を実現するものばかりだ。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉