2020.10.21 【あかりの日特集】 照明市場への新型コロナの影響日本照明工業会 平岡敏行会長と内橋聖明専務理事に聞く

平岡会長(左)と内橋専務理事

 新型コロナウイルスの流行は、国内の照明市場にも様々な影響を与えている。外出自粛に始まり、在宅勤務の定着、そして清潔・衛生意識の高まりといった社会環境の変化は、照明市場にどのような変化をもたらしたのだろうか-。日本照明工業会(JLMA)の平岡敏行会長(東芝ライテック社長)と内橋聖明専務理事に話を聞いた。

 -国内の照明市場の現況は。

 平岡会長 4-9月の国内出荷台数は前年比で88%程度だった。新型コロナの影響で工事が中止になったり、後ろにずれ込んだりした案件はあった。インバウンド需要で好調だったホテルや、飲食店関係の設備工事は厳しい状況になってしまった。ただ、少しずつ戻ってきているのではないか。

 内橋専務理事 店舗関係は厳しい。堅調だったリニューアル案件が止まってしまった。工事が進まなければ、当然照明の導入も進まず、業界にも少なからず影響を与えている。

 -オフィスを縮小する動きもある。この影響は。

 平岡会長 直近で影響してきているかは不明だが、実際にオフィスが減っていけば照明需要も減るだろう。

 逆に、増えているシェアオフィスは、質の高い照明を使い、環境を良くしようとする傾向が強い。

 工業会が推進するHCL(ヒューマン・セントリック・ライティング)のような付加価値の高い照明需要が増える可能性もある。シェアオフィスで働いている人が気分を変えたいと思った際、明るさや光色を変えられ、仕事の効率を高められるようなあかりの環境だ。

 -「巣ごもり消費」は照明にもプラスの影響を与えたか。

 平岡会長 巣ごもりで照明の見直しをする家庭もゼロではないが、大きくプラスになるほどではない。在宅勤務でデスクライトの販売は増えたが、全体的な影響は小さい。

 -衛生・清潔意識の高まりで、紫外線LEDに対する注目が集まっていますね。

 平岡会長 ウイルス除菌の目的で、紫外線LEDは急速に立ち上がってきている。ただ新しい技術でもあるため、安全性の確保も進めなければならない。

 内橋専務理事 紫外線は、コロナのようなウイルスだけでなく、人にも影響を与える光だ。市場では紫外線を使った製品が急速に出てきているが、中には粗悪品もある。それを知らずに使用している人は多く、工業会としては安全性を確保した製品を普及させなければならない。

 工業会では、紫外線に関係する専門委員会を9月に立ち上げた。ポジションペーパーを作成し、国際的な標準化団体にも働きかけていく。

 -「ライティング・ビジョン2030」の進捗状況は。

 平岡会長 今のところ順調に進んでいるのではないだろうか。メーカー出荷はほぼ100%がLED化し、ストック(既設照明)も50%弱がLEDに変わったとみている。