2020.11.19 【デジカメ特集】市場反転の兆しが見え始める

ミラーレスデジタルカメラ「X-S10」ミラーレスデジタルカメラ「X-S10」

 カメラ映像機器工業会(CIPA)が毎月集計しているデジタルカメラ世界出荷統計の9月分では、大きな変化が見られた。同統計は、日本製品が圧倒的シェアを占めているカメラとレンズの実績をまとめたもので、ワールドワイドの市場動向が反映されている。

 グラフ1が、デジタルカメラの3年間の出荷数量月間推移を示している。コロナ禍による影響は大きかった。

 人生の大イベントである入卒業式や結婚式、葬儀。催事の自粛。旅行制限や海外渡航の禁止など、写真撮影の機会が失われたことがカメラ業界にはもろに響いていた。

 例年出荷量が増える3月に前年同月比で47.8%。5月には底の27.4%まで落ち込んだが、6月に40.8%に反転。9月は67.8%まで回復。9月の総出荷額は92.6%、518億7271万円となった。

 CIPA関係者は「顕著な回復カーブが見え始めた」と歓迎しながらも、「戻りが早過ぎるようにも感じられる。写真ファンから真に望まれる地に足の着いた市場再創造の契機になれば」と話す。

 量から質追求でミラーレスが主役に

 カメラファン層拡大に貢献してきたミラーレスデジカメが、プラットフォームの主役になりつつある。近年のカメラ市場は手軽な撮影はスマートフォンに譲り、量から質を追求するカメラファンに支えられている。カメラ本体はレンズ交換式が出荷額の8割弱、ミラーレスデジカメの伸びが顕著でトップシェアを占めている。

 カメラ単価は上昇

 11年前後が販売量のピークで、単価は底値だった。コンデジは9000円台、レンズ交換式も3万4000円まで下落したが、以降は反転し上昇し続けている(グラフ2)。

 コロナ禍が単価を押し上げているようにも見えるのは、高級製品を求める熱心なカメラファンの購買率が高いことが要因、と推察されている。

 4K動画撮影機能も

 デジカメを動画撮影に利用するトレンドが広がり始めている。各社は4K動画撮影能力を高めており、スマホなどとの無線接続で作品を転送し、ネットに簡単にアップできるようにするなど、使いやすさも追求。スマホと一線を画した動画撮影能力を競っている。

 リモート時代のデジカメ活用に期待

 リモート会議が定着した。当初は映像や音声をノートPCの内蔵機能や、Webカメラに頼っていたユーザーの中に、画質・音質にこだわる傾向が見え始めていて、静かなブームになっている。

 カメラ各社は、こぞってデジカメをWebカメラとして利用できるアプリを準備。機能アップも盛んで、ピント、明るさやホワイトバランスの調整、ズーム機能も備えたソフトを開発して無償提供しているところもある。

 リモート会議は、ビジネスだけでなく、文教関連でも多用されていて、デジタルカメラの新用途として期待されている。

 今後は映像だけでなく、ハイレゾスペックの録音機能強化への要望も高まっている。

 照明器具や、カメラ切り替えツールなど周辺機器のニーズもある。店頭デモによる訴求も重要だ。

 年末商機に備える

 年末商戦は、購買を躊躇(ちゅうちょ)していたカメラファンの背中を押すことでビジネスは盛り上がるはず。大いに売りまくろう。

富士フイルムの主力製品「X-S10」

 富士フイルムは、ミラーレスデジタルカメラ「Xシリーズ」注目の最新モデル「X-S10」をきょう19日から発売する。「Xシリーズ」の本格的な撮影機能を備えつつ、より快適に高画質撮影ができる。

 基本性能はフラグシップモデル「X-T4」共通の裏面照射型2610万画素のイメージセンサー「X-Trans CMOS 4」と、高速画像処理エンジン「X-Processor 4」を搭載。最短約0.02秒の高速・高精度AFも可能。

 「X-S10は、Xシリーズで撮影する楽しみをさらに広げるためのカメラで、若い女性やアクティブシニア層など幅広いユーザーをターゲットとしている」と富士フイルム。多彩な色調を表現する18種類のフィルムシミュレーションも装備。同社のカメラを初めて利用するユーザーも独自の色再現を気軽に楽しめる。

画質向上と高速性能が進化、小型軽量で高い操作性

 特徴は、質量465グラムの小型軽量ボディーに新開発の5軸・最大6.0段の手ブレ補正を搭載。ホールド性の高い大型グリップ、進化した「オートモード」や「バリアングル構造」の背面液晶モニターなど、優れた操作性で「快適に高画質な写真撮影ができる製品」と同社。

 動体追従AFは、カメラに近づく被写体と離れていく被写体も正確に捉え続け、顔・瞳AF機能で快適なポートレート撮影が可能。交換レンズ「50㎜F1・0 R WR」装着時には、暗闇に近いマイナス7.0EVの低照度下でも高速・高精度なAFを実現して被写体を正確に捉える。

 動画撮影は、6K相当のデータ量から4K映像を生成。低ノイズの高精細映像を実現。4K/30P 4:2:0 8ビットでカメラ内SDカード記録が可能。HDMI出力は同10ビットに対応。フルHD/240Pの高速動画撮影や最大10倍速のスロー映像での再生もできる。

 軽量コンパクトで使いやすいボディーデザインから、「発表後のユーザーの反響は大きい」と同社。

 同時発表のミラーレスデジタルカメラXシリーズ用交換レンズ「XF10-24㎜F4 R OIS WR」は、従来の超広角ズームレンズ「XF10-24㎜F4 R OIS」をリニューアルし、防じん・防滴構造を採用、さらに小型軽量化も実現した。

 今後も同社はXシリーズ、GFXシリーズ、豊富なレンズラインアップで、写真を撮る楽しみをさらに拡大していく。