2020.11.19 【IoTを支える無線技術】大成建設LPWA無線通信技術を利用トンネル構内計測システム開発

トンネル天端傾斜計「TT-Monitor」を用いた施工現場での本システムの実証状況

 大成建設は、山岳トンネル工事における坑内での計測作業の省力化を図るため、通信ケーブルを使用せず長距離通信が可能なLPWA無線通信技術(Low Power Wide Area)を用いたトンネル坑内計測システム「T-RIPPIA」を開発した。またこのほど、同社が施工する国内道路トンネル工事現場で、同システムを用いてデータ計測状況を検証し、計測作業の大幅な省力化による生産性向上が可能であることを確認した。

 山岳トンネル工事では安全かつ確実に施工するため、掘削後のトンネル変形の有無やトンネルを保持する掘削面周辺の岩盤状況を詳しく把握することが重要となる。そのため工事を進めていく過程では随時計測作業を行い、そこで得られたデータを基に、トンネル工事における適切な掘削方法や補強部材を選定しながら施工を行う。現状の計測作業はトンネルの工事進捗に合わせて通信機器の移設や増設などの盛り替え作業が必要で、機器の設置、機器への電力供給・通信ケーブルの設置・保守、データ回収など、多くの時間と手間を要していた。また、近年では坑内Wi-FiやBluetoothによる無線を利用した計測も可能だが、安定したデータ通信の可能な距離が数mから100m程度のため、トンネル延長が長くなると盛り替え作業などが不可避だった。

 同社はこの課題を踏まえ、次に示す特徴を有するトンネル坑内計測システム「T-RIPPIA」を開発した。

 システムの特徴および実証結果は次の通り。

「T-RIPPIA」の特徴

 1.1km以上の長距離通信を実現

 LPWA無線通信により、1km以上の長距離のデータ伝送が可能となる。そのため、工事進捗にあわせた無線通信装置の移設や増設の回数を格段に低減。

 2.通信ケーブル不要の無線通信システムにより計測を省力化

 LPWA無線通信モジュールとアンテナを計測機器内部に組み込み、小型電池で作動するため通信ケーブルがなくても安定したデータ計測が可能となる。また、通信ケーブルが不要となることで、ケーブル発破防護の手間もなくなるため、坑内計測作業を大幅に省力化できる。

 3.いつ、どこでも計測データを可視化して確認可能

 計測データは、無線データ受信装置を介してクラウドサーバーに集約され、Webアプリ上に自動作成されたグラフがリアルタイムに確認でき、データのダウンロードも可能。インターネット環境を整備すれば、現場や作業所から遠くはなれた地点でもパソコンやスマートフォンを用いて簡単にデータを情報共有できる。

【実証結果】

 従来方式のトンネル天端傾斜計「TT-Monitor」に同システムを導入し、データ回収時における計測担当者の作業効率を検証した結果、データ回収から分析までの計測作業に要する時間が半分以下になった。

 今後、同社は同システムを山岳トンネル工事で行われる多くの計測作業に適用することで、現場での作業の省力化を図り、生産性向上を推進していく。

   <資料提供:大成建設>