2020.12.08 蓄電池や太陽光で飲食店も差別化地域の防災ステーションへ、カッパ・クリエイト
改装が進む回転すし店の店内の様子
市街地にある店舗内に、停電時などに役立つ蓄電池や太陽光パネルなどの小型設備を整えて、地域内で差別化を狙う飲食店が出始めてきた。回転ずしチェーンを全国展開するカッパ・クリエイト(横浜市西区)は、関連機器がセットになった「自立型電源ボックス」を一部の店舗で導入開始。災害時などに地域住民らに活用してもらうためだ。
「停電時に充電ができない、明かりがなく不便だというお客様の声が多く寄せられ、その目線に立っていち早く導入を決めた」。カッパ・クリエイトの林浩二常務は、初導入した東京都葛飾区内の店舗を訪れ、導入の経緯を語った。顧客へのアンケートで、防災面で店に要望する声が多かったという。店舗改装に合わせて設置され、林常務は改装について、「売上げや顧客数などを優先するだけでなく、これからは地域にどれだけ信頼されるか、地域に必要とされるかを考える必要がある」と述べた。
入り口付近に設置された自立型電源ボックスは高さ141センチメートル・幅47センチメートル・奥行き45センチメートル。ボックス内に収納されているのは、ポータブルリチウムイオンバッテリや、折り畳み式ソーラーパネル、リチウムイオンバッテリ搭載LED投光器。他にも、充電できるLEDハンディライト、ACアダプタ付きLED電球などがセットになっている。いずれもライフラインが途絶えたときに生活に必要な機器ばかりだ。
バッテリの蓄電容量は390Wh。持ち運びできる重さは5.3キログラムしかなく、ボックス全体でも重さは13キログラム程度だ。
バッテリには、多くのスマートフォンを一斉に充電できるようUSBポートが12カ所あるほか、AC出力ポートも2カ所ある。最大で約60台の充電が可能だ。フル充電の状態であれば、ノートパソコンで約20回充電できる。バッテリも、付属の太陽光パネルで最短で6時間ほどでフル充電可能だ。
店舗では、これまでも水や食料の備蓄をしてきたが、さらに災害時、ライフラインが復旧するまで、地域の防災ステーションとして機能させるため、充電や照明といった必需品を積極的に提供していくという。
来年度には数十店で導入する方針で、災害の被害が甚大になることが想定される首都圏や大阪府、愛知県などを中心に検討している。設置店舗では、地域住民らにはチラシを配ったり、店頭にポスターを掲示したりしてPRしていく。
販売元のプライム・スター(東京都港区)によると、自立型電源ボックスはこれまで役所や病院、学校などの公共施設を中心に導入が進んだが、コロナ禍の影響などもあり、飲食店にも広がり始めているという。同社の開発てつ会長は「店舗の入り口前に設置し、可視化することが重要。防災ステーションとして顧客を守ってくれる店だと分かり、安心安全が見える化できる効果がある」とメリットを話す。