2026.01.22 【情報通信総合特集】政府2026展望 「信頼できるAI」で日本を再起 政府が国家戦略を本格展開

 政府が国力を左右する人工知能(AI)を国家戦略の中核に据え、取り組みを本格化させた。2025年12月下旬に、AI政策の方向性を示す「人工知能基本計画(AI基本計画)」を閣議決定。生成AIの急速な普及や国際的な技術開発競争の激化を踏まえ、AIを産業競争力と安全保障の両面で重要な「国家戦略技術」とも位置付けた。官民一体で研究開発からリスク対応までを包括的に進める方針だ。米国や中国を中心としたAI分野の覇権争いが激化する中、日本勢が政府主導で巻き返しに向けて動き出す。

産業競争力にもつなげる
 「わが国が持つ質の高いデータを生かし、信頼性という日本の価値を備えたAIを戦略的に開発していく」。高市早苗首相は25年12月19日に官邸で開いた人工知能戦略本部の会議で、AIが産業競争力や安全保障に直結する重要技術であると強調した上で、信頼できるAIで日本の再起を目指す決意を表明。AI関連施策へ1兆円超を投資する方針も示した。

 基本計画は、昨年成立したAI関連法に基づく初の国家戦略。「AI利活用の加速的推進」「AI開発力の戦略的強化」「AIガバナンスの主導」「AI社会に向けた継続的変革」という四つの柱で構成されている。一連の施策でAI活用と技術革新の好循環をつくり、「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」の実現を目指す。

 政府自らがAIの利活用を先導する姿勢も明示した。職員が業務で生成AIを使う環境を構築するほか、国産AI基盤モデルなどの技術開発も推進。現実世界でロボットなどを動かす「フィジカルAI」の開発も促す。安全面では、AIの評価や監督を担う政府機関「AIセーフティ・インスティテュート(AISI)」を抜本的に強化する方針を盛り込んだ。

戦略技術として指定
 一方で政府は、26年度から5年間の科学技術の指針「科学技術・イノベーション基本計画」の策定に向けた検討も加速。「AI・先端ロボット」「量子」「半導体・通信」などの6分野を重点支援の対象領域と位置付けた。これらに研究開発予算や税制優遇などを集中的に配分し、「新技術立国」を実現したい考えだ。

 国家戦略技術としての指定は、民間投資だけでは長期的な開発が難しい先端領域に国が継続的に関与する姿勢を打ち出すものだ。もっとも課題も少なくない。世界に目を向けると、米中を中心に巨額のAI投資が進んでおり、日本の投資規模や人材基盤は見劣りするとの指摘がある。総務省の25年版「情報通信白書」では、生成AIサービスの利用状況を国別で比較した調査結果が示された。米国、ドイツ、中国の3カ国はいずれも利用が拡大。米国では利用率が23年度調査の46.3%から24年度には68.8%に上昇した。日本も利用は伸びているものの、同年度調査で20%台にとどまり、諸外国との差は依然として大きい。

 政府は今後、基本計画に基づく施策を順次具体化し、官民投資のロードマップや制度改革を進める方針だ。AIを社会や経済を下支えする基盤として定着させられるかが、日本の反転攻勢に向けた試金石となる。