2021.01.15 【電子材料特集】各社の事業展開デンカ
石田 執行役員
xEV、5Gなど成長4分野に注力
デンカは、独自技術を生かした電子材料を通じ、自動車や半導体などの技術革新に貢献している。21年は変化の年と位置付け、保有する要素技術を発展させるとともに新製品の開発に力を入れる。
同社の電子・先端プロダクツ部門を統括する石田郁雄執行役員は「20年度は新型コロナウイルスの影響もあり厳しい年ではあるが、部門としては前年度を上回る130億円の営業利益を見込んでいる。21年度は成長市場への取り組みを強化し、22年度(23年3月期)には営業利益を200億円まで引き上げる」と意気込む。
21年度の成長分野として注力するのは①xEV②半導体③5G④再生エネルギー--の4分野。
xEV向けには、放熱材用途の球状アルミナやリチウムイオン二次電池用途のアセチレンブラックを取りそろえ、世界中で電動化が進む自動車市場に向けて提案を加速する。
半導体向けには、封止材用途の球状シリカや電子包材の拡販を進める。特に球状シリカは、回路線幅の微細化とともに超微粉化や徹底した異物除去が求められ、同社の技術力が発揮できる。「ハイエンド向けをターゲットとし、海外勢との差別化を図る」(石田執行役員)。
5G向けには、開発中の液晶ポリマー(LCP)フィルムと低誘電有機絶縁材料(LDM)、低誘電正接フィラーなどを提案。LCPフィルムは耐熱性や高周波特性に優れ、回路基板のコア材やモジュール部品に最適だ。LDMは高周波帯で使用する絶縁材料として提案する。積極的に新製品を開発、新市場での課題解決を目指す。
また、この分野でも基地局を中心に放熱材料として球状アルミナの需要は増加傾向にあり、市場ニーズに応える。
再生エネルギー向けには、アセチレンブラックが風力発電の送電用高圧ケーブルに使用されている。欧州を中心に需要が伸びており、環境配慮型社会の実現に向けて注力する。
成長分野への投資も継続する。シンガポールに建設中の球状アルミナ工場は、新型コロナの影響でスケジュールが遅れたものの、22年春の出荷開始に向け工事を進める。完成すれば18年度比で5倍の能力となる。
石田執行役員は「21年は変化の年。過去にとらわれず、柔軟な発想で事業にまい進する。新製品開発を進めることで、社会課題の解決に取り組みESG経営の実践につなげていく」と話す。