2021.01.22 【照明総合特集】 コロナ禍で市場に変化、非接触をテーマにIoT化

ニューノーマルの需要に対応した照明が、今年は求められそうだ

 新型コロナウイルス禍を受けて、国内の照明市場にさらなる変化が起こりつつある。近年、蛍光灯や白熱灯といった従来の光源からLED照明へと急速に切り替わってきた照明市場であるが、コロナがさらに変化を推し進めそうだ。ウイルス抑制や除菌を目的に紫外線ランプ/LEDに対する需要が急増しており、非接触をテーマにIoT化に対するニーズも、照明を巻き込む形で高まっている。需要構造としては厳しい側面が残る一方、新たな需要の芽をいかに育てるか--。照明メーカー各社のコロナ後を見据えた取り組みが今後を左右しそうだ。

 照明業界ではいま、ウイルス抑制や除菌をテーマとした製品開発に熱い視線が注がれている。最も注目されている技術の一つが紫外線だ。

 東芝ライテックやウシオライティングは、有人環境下でも使える紫外線波長(200-230ナノメートル)のみを照射するウシオ電機開発の紫外線ランプモジュール「Care222」を搭載した装置を製品化。オフィスや施設などに向けた除菌対策製品として提案が進んでいる。岩崎電気も空気循環式紫外線清浄機「エアーリア」の販売が急増。増産体制を整え、さらなる需要に応える構えを見せている。

 紫外線ではないがホタルクスも、光触媒による除菌脱臭機「HotaluX AIR(ホタルクス エアー)」の本格販売を今春に予定するなど、新規事業として取り組む姿勢を示す。これらはコロナ禍で急激に高まった商機をつかもうとする各社の動きで、ワクチン接種といったコロナ収束の状況にも左右されるため、情勢に合わせた柔軟な対応で臨んでいる。

 全体的な照明需要としては停滞気味と言わざるを得ない。日本照明工業会(JLMA)の統計では、従来光源を含む照明器具全体で、昨年4-11月の累計出荷台数が前年から1割超ダウンしている。新築着工件数の減少など市場環境は決して良くはないが、住宅用は1桁台の減少でとどめている半面、非住宅用の落ち込みが目立つ。

 住宅用では、LEDシーリングライトなど、在宅時間の増加により家庭内の照明を見直す機運が一部で見られた。

 LEDシーリングライトで高いシェアを持つホタルクスの山村修史社長は、「LEDシーリングライトが家電量販店やホームセンターなどの小売りルートで好調だった」としている。

 LEDシーリングライトを東芝ブランドで国内販売しているNVCライティングの齋藤重雄社長も「(昨年発売した新製品が)想定以上に伸びた」とするなど、メーカーの業績を下支えした面もあった。

 ただ、家電の巣ごもり需要というほど力強いものではなく、多くのメーカーにプラス効果をもたらすほどでもないようだ。

CSL/HCLで成長へ

照明の新たな価値を創出

 年明け早々に緊急事態宣言が再発出されるなど、今年も自宅で過ごす時間は多くなり、家庭内を見直す動きが一層出てくる可能性はある。しかし、その需要に期待するよりは、コロナ禍がもたらした「ニューノーマル(新しい日常)」で、一般的な生活を送る上でのキーワードになってきた非接触を軸に、製品やシステムを提供していくことが重要になるだろう。

 人感センサーを使って照明をオン/オフするなどは、もともと各所で使われている。ニューノーマルでは、様々なシーンや製品でこうした非接触の対応が急速に進んでいる。技術的には確立されているものが多く、必要に迫られた需要という側面は強いが、利便性が高いこともあり、これからはあらゆるシーンが非接触化すると予想される。

 その際、カギを握る技術はIoTだ。例えば、照明のタッチポイントとなる電源を音声操作に切り替えるには、基本的にはスマートスピーカへの対応が必要になる。スマートフォンのアプリで操作するにしてもそうだ。

 現在、照明業界の目指す方向性としてJLMAは、30年度を目標年度とする成長戦略の中で、CSL(コネクテッド・スマート・ライティング)と、HCL(ヒューマン・セントリック・ライティング)の普及を掲げている。ともにIoTやAI(人工知能)、ビッグデータなどを駆使するとともに、照明器具をハード的にも進化させ、それらを有機的に連携することで、これまでにない照明の価値を創出しようというものだ。人に寄り添うあかりをはじめ、様々なシーンで照明を非接触化するには、こうした方向性は外せないはずだ。

 コロナ禍は、CSL/HCLの重要性を一層高めたと言える。LED照明が普及期に入ったことで照明器具の全体ボリュームは漸減傾向であるが、今年はCSL/HCLを実現し、新たな価値を訴求した製品の登場に期待したい。