2021.03.26 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<35>企業ネットワークをローカル5Gに移行する ④

 世間では「スマートフォン」を「携帯電話」と呼ぶ人がいたり、「PHS」を「携帯電話」と呼ぶ人がいたりする。仕事柄端末だけではなく網を意識すると、違和感を覚えるときがある。

 モバイルシステムは、大きく分けて「モバイル端末」と「モバイル網」から構成される。

 スマートフォンとは、タップやフリックといった指操作だけでなく、アンドロイド(グーグル)やiOS(アップル)といったアプリケーションを開発するための仕様が公開されているOS(基本ソフト)が搭載されているモバイル端末のことを指す。

 これに対して、第三者がアプリを開発したり利用者が自由にアプリを選んでインストールしたりできないモバイル端末をフィーチャフォン(ガラケー)と呼ぶ。

 モバイル網には、携帯電話網やPHS網などがある。網によって割り当てられた周波数や方式などが全く異なるため同じスマートフォンでも、携帯電話網(4G/LTE、5Gなど)に対応しているものと、PHSの網に対応しているものがある。

PHS→sXGP

 PHSは公衆PHSと自営PHSがあり、公衆PHSは一部を除き昨年7月31日にサービスを終了する予定だった。これが新型コロナウイルス感染拡大のため医療関係者に配慮し終了が延期されたものの、今年1月31日をもってサービスを終えた。これに対し「自営PHS」は今もなお、病院や工場、オフィスなどで利用されている。

 前置きが長くなったが、今回と次回では「自営PHS」から「ローカル5G」への移行をどうすればいいのか考えてみたい。

 まずPHSに割り当てられている周波数を見てみよう。PHSの周波数は1.9ギガヘルツ帯と呼ばれる、免許が不要な1880メガヘルツから1920メガヘルツまでの40メガヘルツ幅の部分になる。

 そのうち13メガヘルツ幅が自営PHSに割り当てられ、従来のPHS方式とその後継規格である「sXGP」方式などで共用している。残りの周波数帯が公衆PHSだ。

 sXGPは、日本が主導しているプライベートLTEの方式。IPに対応した4G/LTEコア網によって制御されるので、sXGP対応のスマートフォンが使える。

狭帯域幅のsXGP

 現在、sXGPに割り当てられているのが1896メガヘルツから1901メガヘルツまでの5メガヘルツ幅になる。

 ここで5Gについても見てみたい。同じ自営網のローカル5Gに割り当てられているサブ6(サブシックス、4.5ギガヘルツ帯)が最大100メガヘルツ幅、ミリ波(28ギガヘルツ帯)が最大400メガヘルツ幅となっている。

 いかにsXGPの帯域幅が狭いか分かるだろう。そのため、PHSより高速になるにせよ、sXGPの最大通信速度はローカル5Gの超高速(10ギガbps)にはほど遠く12メガbps程度に限られてしまっているのだ。その半面で、sXGPはローカル5Gより低周波なため、ある程度の障害物があっても電波の回折と反射によって回り込みやすく広域をカバーできる特性がある。

sXGPとローカル5Gの帯域幅

 従って病院や工場などのPHS端末をsXGP対応のスマートフォンに置き換えても、従来同様の安定した音声通話で業務を継続することができる大きなメリットがある。

 一長一短があるsXGP。この1.9ギガヘルツ帯の地の利を生かしながらローカル5Gへ移行するうまい方法はないものだろうか?(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉