2021.04.07 事務機大手各社、ビジネス再構築加速サービス分野さらに強化
新発足の富士フイルムビジネスイノベーションは、新ブランドの戦略モデルを発表した
コロナ禍で厳しい市場環境が続く中、事務機大手各社はビジネスの再構築を加速している。リコーは21年度から20次中期経営計画をスタートし、社内カンパニー制を導入。1日付で富士ゼロックスから社名を変更した「富士フイルムビジネスイノベーション」は、新ブランドの浸透、事業領域、販売エリアのさらなる拡大を図る。キヤノングループ、セイコーエプソン、コニカミノルタなども中長期の成長を見据えた戦略を本格化する。
リコーは今月、新中期経営計画(第20次中計)を開始した。〝デジタルサービスの会社〟へのシフトを打ち出しており、この一環として五つのビジネスユニットからなる社内カンパニー制を導入した。ビジネスユニットは、オフィスサービスなどのリコーデジタルサービス、オフィスプリンティングを主体としたリコーデジタルプロダクツ、商用・産業印刷を対象としたリコーグラフィックコミュニケーションズのほか、サーマル・産業プロダクツ分野、ヘルスケア分野など。
山下良則社長は「本社はグループ経営に特化し、ビジネスユニットによるお客さま最適の経営を徹底する」として提供価値の向上を強調。オフィス事業で培った技術を生かしたデジタルサービスの開発を強化するため、国内社員3万人のデジタル資源の可視化とリテラシーを強めていく。
日欧への積極投資によるインテグレーション能力、ストックにつながるソフトウエアラインアップの強化、地域特性に即したパッケージサービスの展開やモノづくりの体質強化を推進する。OEM事業なども強化していく。
富士フイルムビジネスイノベーション発足と同時に就任した真茅久則社長は「グローバルで拡販し、シェアを上げ、社名、ブランドの認知向上を図る。また、将来の成長を見据え、ITソリューション、サービスをますます強化する」と力を込める。新ブランド「Apeos(アペオス)」から、ニューノーマルにフォーカスした戦略モデルを同時発表した。
真茅社長は就任に当たり二つの方針を掲げた。一つはグローバルシェアの拡大。グローバルな販売活動を通じて販売、ブランド認知の向上を目指す。もう一つはITソリューション、サービスの強化。ドキュメントの電子化といった強みを生かしソリューションの強化を図る。
新体制移行に伴い「富士フイルムビジネスイノベーションジャパン」を設立、国内営業部門と国内全販売会社31社の国内営業を統合した。「新たな価値提供を通じてビジネスを共有、一緒に解決していくことで、お客さまのDXを支援していく」(阪本雅司社長)。
キヤノングループは21年から第6次5カ年計画に入った。新規事業の強化、将来事業の創出を着実に展開し、「新しい事業ポートフォリオの確立と高収益企業への回帰実現」を見据える。国内販社のキヤノンマーケティングジャパンは昨年10月、ITソリューション事業のベースとなる「西東京データセンター2号棟」(東京都西東京市)を竣工。キヤノンMJグループでは、ITソリューション事業を成長の中核に位置付け、新たな成長戦略を打ち出している。3月26日付で就任した足立正親社長は、近くITサービスの加速を実現する新たな方針を打ち出す見通しだ。
セイコーエプソンは、将来にわたって追求する〝ありたい姿〟として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向けて長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定した。小川恭範社長は「環境への貢献に重点を置き、その上で、イノベーション実現のためにデジタル技術を活用し、持続可能でこころ豊かな社会を共創していく」と説明。「環境」「DX(デジタルトランスフォーメーション、デジタル変革)」「共創」を重点的な取り組みと位置付ける。
コニカミノルタは「事業ポートフォリオの転換による持続的な成長およびDXによる高付加価値ビジネスの転換を目指す」(山名昌衛社長)ため、新たな中期経営戦略「DX2022」(20~22年度)を策定した。
オフィス事業については、ペーパーレス化の進展で事業環境が厳しさを増す中でも利益を生み出し続ける収益構造への変革とともに、顧客基盤を生かした業種業態ごとのDX戦略を鮮明にしている。