2021.05.25 【電設資材および関連製品特集】 大きな転換期を迎える新型コロナで厳しい事業環境

「スマート化」が進む電設業界

 電設業界は電気を安定的に供給する発電から送配電、電気を使用する機器までの一連の電気設備をはじめ、電話設備、防災設備、情報通信設備などを含めた多様で不可欠な電気設備を社会に提供する大切な役割を担っている。新型コロナウイルス感染の収束が見えず、厳しい事業環境が続く中で、変化にどのように対応し、人々の安全・安心な生活の向上や経済の持続的な成長に、いかにして貢献するか。業界は今、大きな転換期を迎えている。

 新型コロナウイルス感染の拡大で、民間建設投資は計画案件の延期・凍結が続き、電力設備投資も圧縮基調が継続されるなど、現状、電設業界は厳しい事業環境が続いている。

 国土交通省によると2020年度の新設住宅着工戸数は、前年度比8.1%減の81万2164戸だった。2年連続で前年割れになり、過去10年では最少戸数だった。もともと消費増税が響いて低迷していたところに、新型コロナウイルス感染症拡大が追い打ちを掛けた。このうちマンションは10万8000戸(前年度比8.4%減)一戸建住宅は13万800戸(同11.4%減)となった。

 一方、非居住建築物は全建築物の着工床面積が1億2756万平方メートル、前年比2.7%減と減少した。ここ4、5年続いた都心部の再開発や東京五輪・パラリンピックに伴う建設ラッシュが落ち着き、また新型コロナウイルス感染の拡大も影響した。このうち製造業用は995万平方メートル(同10.3%減)情報通信業用は40万平方メートル(同22.7%減)卸売業、小売業用566万平方メートル(同16.2%減)などとなった。また20年(1~12月)の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)では、受注総額が14兆3169億円(前年比8.5%減)だった。

 野村総合研究所は、21~40年度の新設住宅着工戸数を21年度74万戸、30年度63万戸、40年度41万戸と予測する。同予測では今後、新設住宅を基点にした電設市場の伸びは期待できないことになる。

 さまざまな指標から、今後の見通しについて「新型コロナウイルス感染症の収束時期が不透明な中で、企業の設備投資マインドは慎重にならざるを得ず、電力設備投資も引き続き抑制基調で推移すると想定される」(関電工)など業界には慎重な予測が多い。

〝スマート化〟が進む、付加価値を高めるチャンス

 IoTを活用した住宅やビル、工場など建造物における「スマート化」「インテリジェント化」が進んでおり、電設業界にとっては事業の付加価値を高めるチャンスになる。創エネ、省エネ、蓄エネ、スマートグリッドなどをキーワードに太陽光発電、蓄電システム、LED照明、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)、BEMS(ビル・エネルギー管理システム)、CEMS(コミュニティエネルギーマネジメントシステム)、産業用モーター、産業用インバーター、配電制御機器、配線器具、コントローラー、駆動制御機器、産業用ロボットなど最新の電設機器やシステムによるスマート化への取組みが重要になる。スマート化の一環として、住宅や事業所では従来のアナログ式誘導型電力量計に変えて、電力使用量をデジタルで計測する電力量計「スマートメーター」の普及が進んでいる。データを遠隔地に送れるため、検針員による一戸一戸の電力メーターチェック作業が不要になり、電気の使用量が30分単位で細かく把握することが可能になる。電気料金の抑制や節電に役立ち、災害時における停電箇所の把握などにも活用できることが期待される。

 全国の電力会社単位で設置が進められ、東京電力は2021年3月末時点で、一部取り換え作業が困難な場所などを除いた世帯・事業所に約2840万台を設置した。その他の電力会社も22年度中、または23年度中に取り換えを完了する。

 スマートメーターは水道やガスにおいても実用化が進んでいる。また欧米でも日本とほぼ同じスピードで設置が進んでいる。

 電設業界の一大イベントとして毎年、東京と大阪で交互に開催され、今年は5月に大阪で予定されていた「JECA FAIR(ジェカフェア)」(日本電設工業協会主催)が、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出で中止になった。

 これに伴い製品コンクールも中止となり、次年以降、改めての募集になる。出展を予定していた各社はウェブ展示会などを通じて新製品や新技術をアピールする。