2021.06.11 官民でAIなど技術開発推進政府がイノベーション戦略

 政府は11日、首相官邸で統合イノベーション戦略推進会議(議長・加藤勝信官房長官)を開き、省庁横断で進める新たな科学技術・イノベーション戦略をまとめた。経済安全保障の強化につながる技術分野で国家間の覇権争いが激化する中、人工知能(AI)や量子技術などの新興技術の社会実装に向けた取り組みを官民連携で推進する方針などを示した。戦略は18日にも閣議決定する。背水の陣で世界的な競争優位を目指す。

 同会議に提示した案は「統合イノベーション戦略2021」。政府が3月に閣議決定した「第6期科学技術・イノベーション基本計画」の実行計画として位置付けられる最初の年次戦略となる。

 具体的には、新型コロナウイルスの感染拡大気候変動といった問題を巡って変化する国内外の社会情勢に注目。さらに、欧米や中国が新興技術の囲い込みに向けて多額のイノベーション投資を行っている現状にも触れ、今後1年間で取り組む科学技術・イノベーション政策を具体化した。

 官民連携で重点的に取り組む基盤技術の一つがAI技術。国際動向やデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)の進展を踏まえ、新しいAI戦略を2021年内を目途に策定する計画を盛り込んだ。

 戦略策定に向けては、「AIの活用に伴う成果を目に見える形で出せるようにする」(内閣府)ことを主な論点に検討。AI活用時に問われる公平性や透明性を重視しながら、社会実装を一段と進めるための戦略について探りたい考えだ。

 量子力学の原理を情報処理や通信などに生かす量子技術についても、世界的に熾烈化する開発競争を踏まえ、「戦略の見直しを含め、取り組みの抜本的強化を検討する」と明記。社会実装を視野に量子コンピューターなどの研究開発を進めるほか、基礎研究から技術実証や人材育成まで一気通貫で取り組む「量子技術イノベーション拠点」にも言及。国内8カ所に整備した同拠点の研究開発を本格化させる方針を示した。

 そのほか重視する基盤技術はバイオテクノロジーとマテリアル。さらに戦略では、イノベーションに必要な投資を充実させる方針も明示した。政府が21年度から5年間で30兆円の研究開発投資を実施。官民合わせて120兆円を投資する目標も掲げた。