2021.06.15 【ルームエアコン特集】コロナ禍で空気質に高い関心、出荷台数が高水準で推移

エアコンの使用時間が長くなり、省エネエアコン提案が重要となる

 ルームエアコンは、コロナ禍で在宅時間が伸びたことから、2020年度は初の1000万台超えの出荷台数を記録し、類を見ない市場規模になった。空気質への関心の高まりや、熱中症対策に欠かせない設備として認知されたことなどが、大台超えの背景にある。エアコンの使用時間も年々増えており、21年度も引き続き高水準の需要が見込まれる。早期提案が重要だ。

 ルームエアコンの需要は、21年4月に入っても好調で、日本冷凍空調工業会のまとめによると、出荷台数は前年同月比25.2%増となり、4月単月としては高水準で推移した。金額ベースでは同31.6%増で、平均単価も伸びている。

 コロナ禍で在宅時間が伸びたことから、室内の空気質への関心が高まり、最新の高機能エアコンへの買い替えが順調に進んだ。

 21年度は引き続き20年度並みの需要になるかは不透明だが、メーカーの中には980万台程度の見通しを持つなど、引き続き高水準でのエアコン需要が見込まれている。

 また、今年も夏場の猛暑・酷暑が予想され、熱中症予防対策の観点からも、引き続き強い関心が持たれている。

 メーカー各社もエアコン早期点検をユーザーに呼び掛けており、販売も前倒しで進んでいる。

 コロナ禍で高まった空気質への関心は今後も継続すると見られ、長期的にも安定した需要が見込めそうだ。

買い替え需要が加速

 コロナ禍で在宅時間が伸びたことは、エアコンの使用時間も伸びることになり、基本的な性能である省エネについて、ユーザーはより一層認識をあらためることになった。

 シャープの調査によると、同社のネット接続されたエアコンのログデータを解析したところ、6月度のエアコン使用者は17年が38%だったが、20年は87%と急増したことが分かった。

 同社によると17年の6月の平均気温は24.6度、一方20年は23.2度と、20年の方がやや涼しかったにもかかわらず、本格的な暑さを迎える前の早い時期からエアコンを使いだす人が増えている。

 さらに同社によると本格的な暑さが来る前の6月から除湿を使う人も、20年は17年比で10%増の61%まで高まっているという。

 在宅時間が伸びたことから、室内環境の快適性に関心が集まり、使用時間が増えている実態が見て取れる。

省エネ性能が向上

 エアコン使用時間の増加によって、あらためて関心を引くのが経済性(省エネ性)だ。10年前と比較して最新モデルの消費電力は、約5%の省エネ(資源エネルギー庁ホームページ)など、最新モデルへの買い替えが家計にやさしいこと、環境にも貢献することをより理解してもらえれば、買い替え需要の顕在化につなげられる。

 ダイキン工業は環境月間(6月)に合わせ、全国約500人を対象に「エアコンと地球温暖化に関する意識調査」を実施した。それによると、この夏に環境の取り組みをしたい人は8割以上、消費電力が大きいと感じる家電のトップはエアコン(77.5%=2位の冷蔵庫は12.3%)が圧倒的だ。

 資源エネルギー庁の調査によると、夏の日中午後2時ごろの一般家庭における電力消費は、照明や冷蔵庫を抑え、エアコンがトップ(約6割)だ。ところが、多くのユーザー(8割以上)は少なく見積もっており、エアコンの消費電力の割合を「5~6割」と正しく回答できた人は13%にとどまった。

 このことから、感覚的にエアコンの消費電力が高いと理解していても、実際どれくらいのものかを具体的に理解している人はまだ少ないことが分かる。

 最新のエアコンの省エネ性能を含め、正しい情報をしっかり提供することが、業界にとっては大きなテーマといえる。

 買い替えを求めるユーザーには、APF(通年エネルギー消費効率)が高い各社のフラッグシップモデルの提案が重要である一方、こまめなフィルター清掃など、省エネ的なエアコンの使い方についての啓発活動も求められる。

 買い替えユーザーについては、フィルターの自動清掃機能や、熱交換器の自動洗浄機能など、最新モデルの高機能についてあらためて訴求を強めることが重要だ。

 在宅時間が伸びたことで、家事負担も増大しており、省メンテナンスは家事省力化にも貢献する。

 自動で内部の清潔性を保つことが、コロナ禍における清潔意識の高まりに応える機能であることも訴求することで、最新高機能モデルへの買い替えを促すことになる。