2021.06.23 【備えるー水害からの教訓】〈3〉支える居ても立っても… 立ち上がった電器店仲間
各地から応援が駆け付け、被災した地域店の復旧を手伝った(写真提供=パナソニックLE九州社)
球磨川氾濫、浸水の知らせに立ち上がったのが地元熊本の〝街の電器店〟仲間だった。
「居ても立ってもいられない」。熊本県内などに展開するグループ店、サンエコライフ(同県合志市)の石原政孝社長は、7月4日の豪雨被害の一報を聞くとすぐに行動を始めた。その日のうちにカップ麺などを調達し、翌日に現地入り。人吉市内の複数の地域店に支援物資を届けた。
石原社長を動かしたのは2016年4月の熊本地震の記憶だ。グループでは城南店(熊本市南区)が建て替えを必要とする被害を受けた。最大震度7を観測した同県益城町に住む顧客も多く、倒れたり壊れたりしたエコキュートや室外機の復旧作業に追われた。
グループの店舗もボランティアに助けられた。「受けた恩はきちんと返す」。石原社長はその後も支援物資を運んだ。
「本当に復旧できるだろうか」。熊本県電機商工組合の本田敬喜理事長は想像を超えた惨状に言葉を失った。
商組は青年部を中心に対策本部を設置し「人手不足で困っている」との声に応えて理事長らが現地入りした。
感染対策のため、マスクを着けたままでの作業。強烈なヘドロの臭いは不織布をすり抜け、気力と体力を奪っていく。廃棄物の処理だけでも1日がかりで気が遠くなった。本田理事長と青年部はその後も3回、被災地での作業に当たった。
支援の動き素早く
パナソニックコンシューマ-マーケティングLE九州社(福岡市博多区)は、豪雨翌日の5日から古賀久昌営業本部長が熊本営業所の担当者と現地入りした。6日からは同社で策定している災害発生時のスキームに基づき支援チームを編成。九州各地の拠点から毎日5人前後を派遣、10日まで作業に当たった。災害備蓄の水や発電機を持参し、スコップやモップも調達した。
同社は災害救助法が適用される災害が発生した際、被災地での出張料・見積もりを無料にしている。エアコン、冷蔵庫など必需家電は特別価格で提供し、商品供給も優先する。こうした制度を運用して臨機応変に対処した。
同社の竹之内浩一社長は、被災した店の生の声を聞いて回った。普段は顧客の聞き役に徹する地域店にとって、正直な思いを吐き出せる機会になった。
家電総合卸業のケイワード九州(熊本県嘉島町)も、八代営業所の営業担当者が豪雨翌日から被災地に入り、地域店の片付けやごみ処理を手伝った。店からは感謝の声が届いたが、人吉市などでは商品の販売ができない状況が続いた。竹中行康社長(当時専務)も現地入りしたが、あまりにひどい状況にショックを受けたという。
危機感欠いた
熊本県商組は熊本地震での経験から人員配置や支援を行い、メーカー系列の垣根を越えて復旧に尽力した。一方、被災した一部の組合店とは連絡が取れない状況が続くなど課題も浮き彫りに。「緊急用の連絡網をつくったり、災害時のフローを確立したりする必要がある」と本田理事長は話す。
昨年12月には、パナソニックLE・CS・CEの各社から若手営業担当者それぞれ3人が被災地を訪ね、店主らにヒアリングを行うなど、今後の災害対応について検討した。
地域店からは、支援への感謝とともに「危機感を欠いていた」と反省の弁も聞こえたという。古賀営業本部長は「(災害に対する)慣れに慣れてはいけないと分かった」と話す。各地域店にも日頃からの備えを呼び掛けるとしている。
三菱電機住環境システムズ九州支社(福岡市博多区)の営業担当者も、発生当日から人吉市に入り、系列店を支援。片付けを手伝い水や食料を渡した。
同社は毎年梅雨に、地域店に乾電池や懐中電灯などの備蓄を呼び掛けているが、昨年の水害で足りなくなった店があった。今後はこうした事例を掲載したチラシを作る予定だ。
東芝コンシューママーケティング西日本地域営業部九州支店(福岡市中央区)も、各拠点で定期的に防災訓練を実施。災害発生時には系列店への支援を行うなど、災害に備えた取り組みを進めるとしている。(つづく)