2021.07.02 【家電総合特集】パナソニック河野明アプライアンス社副社長日本地域コンシューマーマーケティング部門部門長

IoT化で新たな価値提案へ
Wi-Fi接続率を高める

 今年度は、新型コロナ禍における巣ごもり需要などの反動が来るだろう。ただ、下期にかけても全体の市況感はそこまで悪くならないと見ている。

 大型テレビの需要は今年度も活発だ。特に画質・音質の良さが評価され、4K有機ELといった高付加価値の製品の販売が好調だ。巣ごもりの影響で、映画などを自宅で楽しむ人が増え、テレビが本来持つエンターテインメント性がこれまで以上に定着した。地デジ移行時に購入した製品の買い替えも続いている。

 国内の家電市場は今後、大きく伸びることはない。限界普及率に達している製品も多く、買い替え中心だが、一定の需要があるのは確かだ。

 白物家電は単価が下げ止まっている製品も多い。例えば洗濯機はここ数年、平均単価アップが続いている。当社のドラム式洗濯乾燥機は、2016年度に比べて約3割単価が上がった。コロナ禍で生活スタイルが変化してきたことも影響しているが、ハードの進化に加えて、IoT化などでそれ以外の価値を提案できるようになってきたことも大きい。

 当社のドラム式洗濯乾燥機で言えば、洗剤の自動投入機能を搭載してハードの価値を高め、スマートフォンからの遠隔操作でIoT化による利点も提案できるようにした。ただ、お客さまのお役立ちのために、まだ進化の余地はあると考える。

 この状況を次のステージに持っていくのが、今年度下期からだ。順次発売する各カテゴリーの新製品では、IoT化を生かし、今までとは違う新たなくらし価値を提案していきたい。機能をアップデートできるような家電も考えている。今後の発信にぜひご期待いただきたい。

 IoT化を生かすには、Wi-Fiの接続率を各製品で高めることも重要だ。スマホアプリケーション「CLUB Panasonic(クラブ パナソニック)」(クラパナ)を5月末にリニューアルした。操作性を向上して、製品のWi-Fi接続も簡単に行えるようにしたほか、くらしに役立つ情報の充実を図り、使用家電の状況に合わせたメッセージなど、ユーザーごとにフィットしたコンテンツを配信できるようにした。

 これまでユーザーとの接点は、製品を購入するまでが多かった。クラパナでは、製品サイトやカスタマーサービスとのシームレスな連携も進めていく。デジタル技術を生かしてユーザー一人一人をサポートし、お客さまとのエンゲージメントを高めるために、今後、さらなるリニューアルも予定している。

 コロナの影響で、ニーズの多様化は間違いなく進んだ。Eコマースの普及は3~5年早まっただろう。一方でワクチン接種も始まったため、アフターコロナを視野に入れた取り組みも、下期からはより強く求められる。

 当社は2月に発売した冷蔵庫で、「ストックマネージャー」を搭載した。重量センサーで食材の在庫状況を外出先からでも把握できるようにし、フードロスの削減につなげる提案を行っている。省エネ性もそうだが、こうした環境問題につながるテーマは、コロナの次に来る重要な領域。各家電やサービスで訴求を強めていく。