2021.08.18 【コネクター総合特集】サプライチェーン拡充昨今の材料不足を踏まえ調達強化や代替品提案に力

 コネクターメーカー各社は、旺盛な需要に対応するため、積極的な生産能力増強を推進している。各社はグローバル生産能力増強のための工場拡張や生産設備増強を進めるとともに、昨今の材料不足を踏まえ、部材調達の強化や代替品の提案などにも力を注ぐことで、グローバルサプライチェーンの維持・拡大に努めている。

 コネクター各社の新工場建設や新工場棟増設の動きは、2017年から19年にかけて活発さが継続した。20年はコロナ禍に伴う不要不急の投資抑制などの動きから、新工場着工件数はやや減少気味となったが、20年秋以降の急速なコネクター需要増大を背景に、ここにきて、新たな自動機の増設や成形能力の増強といった投資が活発化している。

 分野別では、今後も長期にわたる需要の増加が見込まれる自動車や産業機器市場向けのコネクターやコネクター内製部品などの生産能力アップへの取り組みに重点が置かれている。自社工場での生産設備増強に加えて、国内外の外注先との連携強化や有効活用にも力が注がれている。

 一方で、最近はコロナ禍からの急速な需要立ち上がりにより、半導体をはじめとする部材の調達難が深刻化。コネクターの主要材料である金属材料や樹脂材料なども需給ひっ迫が顕著となっている。特に成形工程などに必要な樹脂材料は、ナイロン(ポリアミド)系樹脂を中心に供給不足が深刻化している。

 ナイロン系樹脂の需給ひっ迫の背景には、ICT機器や自動車関連をはじめとする急速な需要増の影響に加えて、今年2月に米国で発生した大寒波の余波で、化学メーカーの工場が集中するテキサス州で長期間の停電が発生したことが挙げられる。この停電による化学工場の操業停止により、ナイロン系樹脂の原料であるヘキサメチレンジアミン(HMDA)メーカーの製品が供給不足に陥り、HMDAを使用する「PA66(66ナイロン)」や「PA6T(6Tナイロン)」などの生産が影響を受けたことが、コネクターメーカーの調達にも大きな影響を与えている。

 このため、コネクターメーカーでは、サプライヤーとの連携によるグローバル調達力の強化を図るとともに、HMDA使用ナイロン樹脂から、HMDAを使用しないナイロン樹脂への代替、さらにLCP(液晶ポリマー)といった非ナイロン系樹脂への代替提案などに力を入れている。しかしながら、直近では、これらの非HMDA系樹脂に関しても調達難が深刻化する傾向にあり、先行きへの不透明感が増加する傾向にある。

 加えて、コネクター各社では試験・評価体制の強化・拡充や工場のスマートファクトリー化に向けた投資などにも力を注いでいる。

 同時に、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、20年にASEANやメキシコなどで現地政府のロックダウン政策の影響により工場の生産停止を余儀なくされた経験などを踏まえ、グローバルサプライチェーンの再強化に向けた取り組みも活発となっている。このため、国内工場での新設備導入や、中国工場への再投資などの動きも見られている。

 グローバルサプライチェーン強化の一環として、同一製品をグローバルに複数拠点で生産できる体制づくりを従来以上に強化することで、顧客に対する万全な供給体制の確保が志向されている。