2021.10.12 新電力のイーレックス 海外初のバイオマス発電事業 ベトナムで、メコンデルタのもみ殻を燃料

栽培を始めたニューソルガム

品種改良し、将来的に日本国内での発電で燃料にする品種改良し、将来的に日本国内での発電で燃料にする

 新電力大手のイーレックスは、ベトナムでバイオマス発電事業に乗りだす。主力のバイオマス発電は国内で最大の事業者だが、海外では初めてとなる。現地で進める燃料栽培事業などが縁となり浮上した計画で、大量に余ったもみ殻を活用する。発電所では2024年秋ごろの商用運転開始を目指す。

 ベトナム南部のハウジャン省にハウザンバイオマス発電所を建設する。国営ベトナム電力総公社グループの電力コンサルタント企業などが設立した事業会社に出資参画し、イーレックスの出資比率は51%になる予定。

 同発電所は22年夏ごろの着工を計画している。年間で一般家庭約9万3000世帯分に相当する20MWを発電し、現地の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)で売電する。

 イーレックスはバイオマス発電が主力。国内では高知県や福岡県など計5カ所の発電所を稼働させており、ほかに開発中が2カ所ある。合計の設備容量は約65万kWに達し、国内のバイオマス発電事業者としては最大だ。

 発電所を建設するハウジャン省は、ベトナム南部を流れる大河、メコン川河口の大穀倉地帯メコンデルタに位置する。肥沃(ひよく)な土壌を生かした稲作が盛んで精米所が多数あり、コメから多く出るもみ殻の活用が課題となっている。

 ベトナム政府は、もみ殻の再利用を要請しているという。今回の発電所では、もみ殻を燃料として年間約13万㌧使う予定だが、メコンデルタ全体で生じる2.5%程度にすぎず、「まだ多くが余っている状態」(イーレックス)だ。

 イーレックスは既に、ベトナム政府の支援の下、バイオマス発電燃料用の植物栽培事業を始めた。降雨量が少ない地域での生育に適しているキビの一種「ソルガム」を、さらに品種改良した「ニューソルガム」の試験作付けを続けている。22年から500ヘクタールで栽培を始める計画で、本格栽培となれば日本国内に輸入して発電所での活用を予定する。今後、4万5000ヘクタールの開発を目指す。

 こうした事業が縁となり、ベトナム政府側から発電所などについて打診され、建設が決まったという。

 同社によると、ベトナムでは都市化の進展などにより、電力需要が年率10%のペースで増加しており、電力不足も懸念されている。そのため、北に隣接する中国や西のラオスから電力輸入を拡大し、さらに再エネ開発にも傾注していく。9月には、45年までに再エネの電源割合を40%以上に高める計画を策定した。

 イーレックスはベトナムで「別の複数の案件を検討している」(同社)といい、今後も積極的に事業展開を図っていく方針だ。