2021.11.02 エネ基記載の水素、アンモニアにも言及脱炭素社会を見据え、JOGMEC技術センターが報告

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は10月25~29日の5日間、千葉市美浜区の技術センター(TRC)の成果などを報告する「JOGMEC-TRC ウィーク2021」をオンラインで開催した。「資源ミライ開発~脱炭素社会を支える資源開発技術を拓く」をテーマに、同センターの研究者や民間企業の技術者らが次々と講演。10月に閣議決定した第6次エネルギー基本計画の2030年電源構成に初めて盛り込まれた水素、アンモニアについての取り組みも紹介された。

 JOGMECでは4月にカーボンニュートラル推進本部を設置。従来の部門の枠組みを超えて横断的な取り組みを強化している。初日の25日には「低炭素社会の実現、そして、その先へ。」と題してJOGMEC技術企画課の三宅勇治氏が講演した。

 三宅氏は、燃焼時に二酸化炭素(CO₂)を出さない燃料として期待されている水素、アンモニアに言及。国は、国内の50年の導入目標に水素2000万トン、アンモニア3000万トンを掲げていることから、「30年から50年の間に10倍くらいの急激な増加を目指しており、長期的にニーズが高まる」と語った。新たなエネルギー基本計画では、水素、アンモニアによる発電が30年の1次エネルギー供給ミックスに1%の比率で盛り込まれた。

 特にアンモニアは、火力発電所で石炭との混焼や、長距離輸送が難しい水素を運ぶキャリアとして注目されている。

 一方で、既存の石油、天然ガスについて「安定的に供給することも引き続き重要なテーマだ」(三宅氏)とし、エネルギーセキュリティーの観点などを理由に挙げた。

 「産油国がより強く」(三宅氏)なることへの懸念がある。急激に脱炭素シフトに進む場合、石油メジャーなどが事業撤退する一方で、資源価格に強い影響力を持つOPEC(石油輸出国機構)加盟国のシェアが増し、供給の不安定化や油価の高騰などが生じる恐れがあるという。

 また、特別講演として、資源エネルギー庁石油・天然ガス課の中山文博氏が、30年や50年を見据えた石油、天然ガス政策について背景などを説明した。

 石油と天然ガスの共通の課題として、原油の9割以上を中東に依存するなど、ほぼ全量を輸入に頼っていることを改めて指摘した。そのため、中山氏は「中東情勢や新興国の需給構造変化の影響を受けやすい」と述べた。

 LNG(液化天然ガス)は多角化が進んでいるものの、輸入量で世界1位だった日本の座を今年にも中国が抜く勢い。「新興国の需要が増加することで、日本の国際市場での相対的な地位低下が課題になっている」(中山氏)という。