2021.11.17 アブラヤシの廃材を木質ボードにパナソニック、温室効果ガス削減に貢献
アブラヤシ廃材由来の再生木質ボードを使った家具の例
パナソニック ハウジングシステム事業部は、世界で初めてアブラヤシの廃材を活用した再生木質ボード化技術を開発した。
アブラヤシの果実から採取されたパーム油は、食用油や洗剤の原料として多岐にわたって使用されており、商業作物としてマレーシアやインドネシア、タイなどの東南アジア諸国で大規模に栽培され、これらの国でのパーム油の輸出は重要な産業となっている。
問題は、アブラヤシの収穫期間(25~30年)を過ぎると、そのまま農園内に倒木され、放置されているのが現状だ。
アブラヤシは、不純物(シリカなど)やデンプンを含んだ水分が多く、放置しておくと腐りやすく、今まで廃材として活用がされてこなかった。腐敗すると温室効果ガス(メタンやCO₂)排出につながり、活用が期待されていた。
同社は今回、不純物を洗浄工程により除去し、抽出した長繊維を圧縮成形した独自の中間材を用いた再生木質ボード化技術を開発。品質の安定したボードへ再生することに成功している。
同社では、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム「SATREPS(サトレップス)」の研究課題(日本とマレーシアの2国間プロジェクト「オイルパーム農園の持続的土地利用と再生を目指したオイルパーム古木への高付加価値化技術の開発」)に参画し、アブラヤシ廃材の有効活用策として再生木質ボードの開発に取り組んだ。
アブラヤシ廃材を中間材(ペレット)に仕上げ、これを既存の木質ボード工場で再生木質ボードにし、2022年春から国内市場の家具メーカー(大塚家具/東京インテリア家具)に提供し、受容性を検証したのち、23年度以降家具市場はじめ建材などへと活用を広げ、さらに海外市場へと本格展開していく考えだ。特に年間26兆円あるといわれるアジアの家具市場での利用拡大を目指していく。
アブラヤシ廃材を利用することで、温室効果ガスの排出削減に大きな効果が見込めるほか、中間材化することで輸送性・保管性も向上するため、世界各地の遠隔地にあるボード工場でも従来の木質ボード原料と同じように使用でき、原料の海上輸送の効率化による温室効果ガス削減にも貢献する。
また、世界的に木材資源の減少が深刻化する中、未利用資源であるアブラヤシ廃材由来の再生木質ボードは従来の木質ボードの代替品として高い利用価値がある。
廃材を回収・活用することで、農園内での資源循環も促し、再植林により現代の生活に不可欠なパーム油産業の持続的発展にも寄与できる。
放置される廃材(幹)の量はマレーシアでは年間4500万トン、インドネシアでは同9000万トンに上るといわれる。
一方、アジア家具市場で使われる木質ボードの量は年間4200万トンとされ、パームヤシ廃材を有効活用すれば、十分な再生木質ボードの供給量を確保できる。