2022.01.07 【製造技術総合特集】スマートファクトリーとデジタルツイン技術

「FSF2.0」のプラットフォーム実装機NXTR「FSF2.0」のプラットフォーム実装機NXTR

AGVによる部品補給AGVによる部品補給

FSF2.0 新しい自動化方式を提供
仮想と現実のギャップゼロへ

 1.はじめに

 FUJIはFUJI Smart Factoryプロジェクトを2017年に立ち上げソリューションを提供してきた。

 これらは当社実装機を中心とした生産ライン内に対する取り組みとして、M2M連携を主としており、日々、国内外問わず多くのパートナーと連携開発をし、お客さまへの導入を進めている。

 2.「自動化生産に向けたFSF2.0チャレンジ」

 市場は今、「工場全体に視点を当てた生産ライン・フロアの作業や生産工程の自動化、省人化、そして最終的には無人化」とニーズがシフトしてきているため、それに適応する必要があると考えている。ゆえに当社ではFSF2.0を立ち上げ、NXTRを中心とした新しい自動化の生産様式の提供を目指すこととした。

 「FSF2.0=SMTライン・フロアにデジタルツインを適用し、仮想(計画作成~シミュレーション)と現実(生産実行~生産実績)のギャップゼロ」を目指す。

 【仮想(計画作成~シミュレーション)】

 ①お客さまのシステムによる生産計画(品種、数量、納期、納品先など)の作成②Neximによる生産実行計画・プログラム最適化③生産シミュレーションツールによる事前シミュレーションによる仮想データ作成。

 【現実(生産実行~生産実績)】

 ④製造実行開始⇒各種倉庫(部品、フィーダー、マスクなど)への出庫指示-AGVで搬送-外段取りエリアで段取り・補給部品事前準備-AGVで搬送、自動供給(不要なものは回収)-自動段取り替え(プログラム、資材、部材)-自動生産開始までの作業自動化および、作業者に対してのライン内設備の作業案内・異常通知・リモート対処を行える統合ナビゲーション⑤生産中のリアルタイム品質、稼働状況分析(Intelligent Process Quality Control(以下、IPQC)による自律制御⑥生産ライン全体での生産実績モニタリング、レポート・分析。

 【仮想-現実のギャップ分析】

 ⑦仮想-現実比較結果レポートによるギャップ分析と改善策検討。

 3.「仮想(計画作成~シミュレーション)」

 3.1 生産計画の作成・最適化(お客さまのシステムと連携)

 お客さまのシステム上で作成される生産オーダーをNeximにインプットすると、生産順および部品セットアップの最適化を実施する。

 3.2 部品自動補給生産用最適化

 NXTRではスマートローダーというフィーダーの自動供給機能を利用して、新しい最適化方式を採用した。

 NXTRではローダーによる自動入れ替えが可能であり、上の部品供給スロットには現生産と次生産を配置し、下のスロットには次々以降の生産で使用する部品を配置することで、多品種ながらサイクルタイムも最適化に近づけられる、いわば多品種大量生産を実現できる仕組みを用意している。

 3.3 部品在庫確認

 生産計画を確定する前にすべきことがある。在庫確認と予約である。Neximでは計画作成時に現在の在庫で生産が可能かどうかを確認し、使用する部品リールとひも付け予約する機能を搭載している。これにより生産直前になって部品が無くて生産ができないということはなくなる。ほかのラインで使おうとした場合も、使用できなくすることができる。

 3.4 シミュレーション

 実行可能な生産計画が完成したら、部品倉庫の出庫から生産ライン最後尾のアンローダーまでのシミュレーションにより総生産時間を計算する。

 あらかじめ対象の生産フロアのモデルを作成し、人、モノ、設備の移動や稼働条件を登録しておく。そこにNeximで作成した生産計画、製品仕様を入力することで精度の高いシミュレーションを実現した。

 4.「現実(生産実行~生産実績)」

 4.1 生産計画/進捗に合わせた自動倉庫からの出庫指示と外段取り

 Neximにて生産資材、機材の使用時間順リストを作成し生産進捗(しんちょく)に合わせて、各倉庫と連携し、自動出庫や準備作業案内を行う。

 【部品とフィーダー】

 NXTRでは搬送用フィーダーマガジンに20本搭載できるため、この単位で自動倉庫からの払い出し指示をできるようにして、必要な時に必要なだけの準備ができる仕組みを構築した。

 4.2 部品・フィーダーのAGVによる完全自動補給・交換、回収(段取り替え、部品補給)

 外段取りエリアにてフィーダーマガジンに部品・フィーダーをセットした後、AGVがバッファステーションと呼ばれる、部品補給ステーションに生産で使用する部品を供給する。

 4.3 自動段取り替え

 FSFではさまざまな自動段取り方法を提供している。

 ①カンバン読み取り自動段取り②基板ID読み取り自動段取り(各基板)③生産計画順自動段取り(計画達成時に自動切り替え)。

 設備が次の生産プログラムに切り替わったのちの内段取り作業も自動化進めている。

 【印刷機 NXTR PM】

 ・バックアップピン自動配置

 ・マスク、バックアップブロック自動交換

 ・はんだ自動回収、自動補給

 【実装機NXTR】

 ・モジュール単位で自動段取りが可能で、異なる製品を同一機内に流すシームレス切り替えが可能

 ・バックアップピン、ノズル交換可能

 ・フィーダーはスマートローダーにより事前に配膳される。

 4.4 生産中の異常通知、リモート対処

 FSF2.0では生産中、ライン内で発生するさまざまな異常や警告を作業者が携帯するスマートフォンなどのデバイスに案内・通知する。生産ラインを1人の作業者が対応しようとした場合、移動のムダ、待ちのムダ、動き(動線)のムラをなくし、効率的な作業を行えるようなナビゲーションおよび操作を行えるようにする。

 4.5 自律制御(クローズドループ)

 FSFでは四つの自律制御機能(IPQC)を提供している。

 【IPQC Printer Feedback】

 SPIからの印刷条件補正指示(印圧、版離れ速度、クリーニング周期など)により印刷条件を最適に保つ機能。

 【IPQC Machine Feedback(リフロー前AOI連携)】

 AOIからの検査結果情報をもとに統計分析し、対策の指示を実装機、または作業者に案内する機能。

 【IPQC Feed Forward(SPI連携)】

 SPIからの装着位置補正指示を実装機に反映する機能。

 【IPQC(装置エラー自己診断・対策案内)】

 実装機での装置エラー、吸着エラー、前後工程待ちなどの生産状況を監視、統計処理し、対処必要な条件を満たしたときに、作業者に対して対策を促したり、設備に対して自動的に対処させたりする機能。

 ワークフロー作成機能で、お客さまごとに調整可能。

 4.6 生産実績見える化

 【ライン全体モニタリング】

 FSF2.0ではライン先頭に設置されるローダーから、最後尾のアンローダーまでの全ての設備の生産実績・エラー実績などを見える化し、ライン内のどこに問題やボトルネックがあるか分析可能なシステムを構築する(開発中)。

 【実装不良分析(DAM)】

 印刷機、SPI、実装機、AOIと連携し、不良検出時に即、対象基板の生産に関わるデータを提供。短時間で要因特定ができるため、不良の流出を防止し、被害を最小限に抑えることができる。

 5.「仮想-現実のギャップ分析」

 仮想(予定)と現実(実績)のギャップを見える化し、原因分析、対策立案、実行することにより改善活動が行える仕組みを提供する。

 6.まとめ

 今回、当社が考える次世代のスマートファクトリーソリューションであるFSF2.0を紹介した。「工場全体に視点を当てた生産ライン・フロアの作業や生産工程の自動化、省人化、そして最終的には無人化」の実現に向けて開発を進め、お客さまに感動していただけるスマートファクトリーを目指していく。
〈筆者=FUJI〉