2022.01.07 事務機各社、相次ぎ電帳法対応ソリューション2年の猶予期間を活用し中小企業デジタル化推進

 改正電子帳簿保存法(電帳法)が1月1日に施行されたが、準備期間が短く、「対応が間に合わない」などの声が相次いだため、2年間の猶予期間が設けられた。当面、電子データで受け取った書類のデジタル化義務は猶予となる。しかし、この猶予期間を生かした着実なデジタル化の進展が求められる。特に人材不足からデジタル化が遅れている中小企業では、電帳法改正はデジタル化の好機。中小に顧客基盤が多い事務機メーカーは、電帳法対応ソリューションを相次いで打ち出している。

 電帳法はこれまでも何度か改正され、規制などが緩和されてきた。16年にスキャナー対象書類の金額基準「3万円未満」が撤廃、17年からスマートフォンによる撮影での電子ファイルが認められるなど、規制緩和が進んだ。

 今回の改正では、従来の所轄税務署署長の承認といった「承認制度」の廃止やスキャナー保存の要件緩和などの一方、電子取引データの厳格な保存が盛り込まれた。電子契約、EDI(電子データ交換)取引、メール添付、ファクス受信文書など、電子取引の電子データ保存が義務付けられ、電子取引データの紙出力などでの保存ができなくなった。

 しかし、「準備が間に合わない」などの声が多く、2年間の猶予期間が設けられた。向こう2年間は紙の保存が容認される。それでも、デジタル化の大きな流れは変わらない。

 人材不足からデジタル化が遅れているのは、企業の9割以上を占める中小企業だ。「2年間の猶予期間を生かし、デジタル化を進展させるチャンス」との見方も強い。中小企業のデジタル化支援に注力している事務機メーカーは「電帳法改正を中小企業のデジタル化のトリガー」(リコージャパン)とし、ソリューション提案を活発化している。

 リコージャパンとリコーグループのメイクリープス(東京都目黒区)は、電帳法改正に対応したソリューションの提供を開始した。クラウド型請求管理サービス「MakeLeaps」、クラウド型AI(人工知能)帳票認識OCRソリューション、企業間取引デジタル化ソリューションで、電帳法対応機能の強化を図った。

 リコージャパンは「複合機を使った紙文書のスキャニングソリューションや、重要な紙帳票、電子データの維持、管理、検索などをサポートするサービスなど、今後も市場ニーズと各種法制度に適応したサービスを拡充し、デジタル化を推進していく」と支援に力を入れる。

 キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、経営コンサルティングなどを手掛け多くの顧客を持つNIコンサルティングと戦略的業務提携を結び、電帳法改正に対応する支援サービスを今月開始。

 NIコンサルティングの中小企業向けグループウエアに、キヤノン製MFP(複合機)からファクス文書を直接保存可能なファクス受信連携強化を提供する。4月には直接スキャナー保存できるアプリケーションの提供も始める。「電子取引データの保存とスキャナ-保存の両面から廉価なサービスを提供」(キヤノンMJ)していく。

 富士フイルムビジネスイノベーションは、クラウドストレージサービス「Working Folder」に、国税関係書類の授受・保存が可能な「Working Folder エビデンス管理オプション」の提供を開始する。

 電帳法の改正要件に準拠した運用を支援するとともに、国税関係書類の授受から保存までの一貫した管理を可能にする。電子書類を扱うために必要な取引関連情報(帳票番号、取引日、取引金額、取引先名称など)を電子書類に付与して保存でき、電帳法で規定される要件で検索できるのが特徴だ。システム導入にとどまらず、導入時の初期環境構築、電帳法対応のための業務手順作成、導入後のアフターフォローなど幅広く対応する。

 毎週開催しているオンラインセミナーもすぐに満席になるほど好評だ。

 改正電帳法は、デジタル化の好機。中小企業のデジタル化促進の起爆剤としての期待も大きい。

 電子帳簿保存法 国税関係帳簿・書類を電子データとして保存することに関する法律。これまでも時代の要請に合わせて改正されてきた。今回の改正では、事前承認制度の廃止、スキャナー保存の要件緩和などの一方、電子取引データ保存を厳格化した。21年5月法改正、今年1月1日施行。