2022.03.01 原材料の「地政学」リスク注視電子デバイスのサプライチェーンで代替など官民も力

 ロシアとウクライナの紛争など地政学上のリスクが問題になる中、現地で展開する企業活動への影響はもちろんのこと、資源調達の在り方などサプライチェーンに、改めて注目が集まっている。不安定な状況が続く可能性が高く、人権などの観点も加わる。対露関係では、経済制裁と報復の応酬も懸念される。エレクトロニクス関連各社などは、当面の安定供給確保とともに、中長期を見据えた態勢に本腰を入れている。

 動向をフォローしている資源エネルギー庁は、2050年カーボンニュートラルに向けた鉱物資源政策を、国際エネルギー機関(IEA)の見通しなどを踏まえつつまとめている。

 バッテリーにも使われるメタルのうち、例えばニッケルは、堅調なEV向け需要や、鉱山事故・ストライキによる供給懸念で価格が上昇していた経緯がある。そこへウクライナ情勢が追い打ちをかける。コバルトやリチウムも、EV向け需要など上昇向にあり、テスラなども対策に乗り出している。

 米調査会社は先月、ネオンやパラジウム、C₄F₆など半導体関連の材料が、ロシアやウクライナ周辺から供給されていることをレポートで指摘、関心を集めた。

 IEAの見通しによると、そもそも鉱物資源の需要は、グリーン化の流れなどの中で上昇基調にあり、40年には20年比で銅が1.7倍、コバルトが6.4倍、リチウムが約13倍、ニッケルが6.5倍、レアアースが3.4倍になるという。こうした資源については、環境や人権への配慮も国際的に求められ、コスト増になり得る面がある。それだけに、国際的な競争も進む。

 こうした中、電子部品や素材関連の各社も、供給網確保の努力に加え、希少な資源をより使わずに済む製品開発や、非鉄金属のリサイクル強化などにも取り組んでいる。

 経済制裁や対抗措置の応酬となれば、主要金属のアルミやレアメタルなどへの懸念は強まりかねない。現地周辺での直接の企業活動はもちろんのこと、原材料への直接・間接の影響にも目を凝らしつつ、開発や調達に取り組むことが一層求められそうだ。
(2日付の電波新聞・電波新聞デジタルで詳報します)