2022.03.24 太陽光発電所 〝品質〟が問われる時代にカギ握る地域との共生

エクソルの太陽光発電所。格付けサービスは、当初は新設を対象とし、その後、既設にも広げていくという

 カーボンニュートラル社会の実現に向け、中核を担う太陽光発電所の「品質」が重要視されてきた。地域との共生は、その重要なポイントだ。取引を前提に、地域との関係性を評価に加えた格付けサービスが始まり、規制や推進策を通じて、地域にあるべき太陽光発電の姿を模索する自治体もある。普及拡大のため、「どんな太陽光か」が問われるフェーズに入った。

 地域との関係性などを重視して、太陽光発電所を五つ星で査定―。

 そんな独自の格付けサービスを始めたのが、太陽光発電設備の設計、施工などを手掛けるエクソル(京都市中京区)だ。発電所の売買取引の拡大に向けて立地や発電量などを評価する。地域との関係性も重視。発電所の売り手と買い手が互いに安心して売買できる基準を提供し、取引の普及や活発化を後押しする。

 サービスは「XSOL SOLAR STAR(エクソル・ソーラー・スター)制度」。100以上の検査項目で太陽光発電所の査定、評価を行い、五つ星を最高位としたランク付けを行う。ランクを基に1kW単価の価格を算定。取引の基準にしてもらう。

 エクソルは、運用を始めた仕組みについて「建設する側は、売れる一定レベルの発電所を作る意識を持て、買い手にとっても安心感が生まれる」と指摘。「発電所のクオリティーが担保され、問題がある発電所をこれ以上増やさないことに貢献できる」と意義を語る。

 同社は太陽光発電の関連設備に特化した事業を展開。出荷してきた太陽光モジュールは2・4GWに達する。2017年ごろから非FIT(再エネ固定価格買い取り制度)を含めた発電所の売買も本格化させ、20年6月~21年5月の1年間で100カ所以上を取引してきたという。こうした経験を基に、今回の体系的な仕組みをつくった。

 査定では、設備ごとに公的認証を受けているかを確認するほか、発電所が約20の関係法令などに適合しているかをチェックする。隣接地との境界が明確になっているか、面している道路の状況、建設地の排水状況も評価。地域住民への説明会が開かれ、合意形成がされているかなども査定の大きなポイントだ。「地域に望まれ、必要とされる発電所が増えていかなくてはならない」(同社)。

 100を超える項目が対象になり、一つでも基準を満たさなければ、売買を推奨しない発電所と評価。計画の見直しなどを提案することになるという。

 基準をクリアした上で、地域単位で水害などのリスクが分かるハザードマップと照合し、地滑りのリスクなども3段階で判定。さらに、パネルへの積雪なども考慮したシミュレーションで発電量も評価する。最終的に評価を総合して星一~五つの5段階で格付けし、価格を算定する流れだ。

 エクソルは「売り買いをスムーズにすることで太陽光発電の導入量を増やしていく。評価制度で、健全なより良い発電所を後押しできる」と期待する。

規制と推進バランス取り誘導

 遊休地などに直接、発電設備を建設する野立て設備が多い地方では、地域との共生が、直面する課題として浮上している。山梨県は、規模にかかわらず野立ての全ての太陽光発電設備に、地域住民に十分な情報提供を行い、良好な関係を求めることを課すことを決めた。3月上旬に県議会で条例改正案を可決、4月から適用する。

 山梨県は日照時間が長く発電に恵まれている利点があり、FIT以降、太陽光発電の導入が急速に進んだ一方、災害リスクや景観などさまざまな問題が地域住民らから提起されてきた。

 そこで県は21年10月に一部施行した条例で、出力10kW以上の野立て設備を対象に、森林伐採を伴う開発や、災害リスクが高い急傾斜地などへの設置を原則、禁止した。「住民の理解が得られない」(県)などの理由からだ。

 全ての事業者に適正な維持管理の計画書の作成も求めている。こうした条例は、都道府県レベルの自治体では珍しいという。

 一方、2月中旬から、住宅向け太陽光パネルについて、県民らの共同購入を後押しするプロジェクトを立ち上げた。「できるだけ多くの県民に参加してもらう」(県環境・エネルギー政策課)ことでスケールメリットを生かし、安価に購入してもらい普及を促す。

 山梨県は面積の8割を森林が占める。地域とのトラブルになりやすい森林などよりも、住宅地などでの普及拡大を誘導していく狙いだ。同課の担当者は「規制と推進のバランスを取りながら、太陽光発電を広げていく」と話す。

 こうした動向について、環境省影響評価課の担当者は「地域との共生と、再エネによる脱炭素との両面から導入を進めることが非常に重要なポイントになってきている」と指摘する。